第九十六話 それぞれの野心
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クシミリアンは、戦争のカードを手放さないことも臭わせた。
「ペリゴールは一休みしたら、今度はゲルマニアに飛んでくれ」
「御意、ゲルマニア相手にどのような交渉をなさるおつもりですか?」
ペリゴールの問いに、マクシミリアンはニヤリと口元を歪ませた。
「盗られたものを返してもらうのさ」
「盗られたもの……なるほど、『あそこ』ですか」
「そう、東ロレーヌの返還の交渉だ」
長年、トリステインとゲルマニアとの領土問題だったロレーヌ問題に決着をつける時が来た。
★
同じ頃、ハルケギニアのもう一つの大国、ガリア王国の王都リュティス。
ハルケギニア屈指の大都市の郊外にはガリア王の居城・ヴェルサルテイル宮殿があり、老いたガリア王が家臣らに政務を任せ、老い先短い余生を送っていた。
大国ガリアの国力にふさわしく、一人の老人の介護のために数百人という数の人々が、ここヴェルサルテイル宮殿に詰めていた。
今日はガリア王が二人の王子を宮殿に呼び出し、三人で国王に入ったきり一時間ほどが経過していた。
家人やメイド達はヒソヒソと小声で噂しあった。
「陛下もお歳だろうし、今回の突然の呼び出しは、次期国王が誰か、御二方に直接言うためではないか?」
「やっぱり、次期国王はシャルル殿下じゃないかしら?」
「シャルル殿下なら、お人柄も良く、ガリアをより良き道へ導いてくださるだろう」
「ジョゼフ殿下は?」
「無能王子が選ばれることはないだろう。魔法が使えないのはもちろんの事、失政ばかりで良い点なんか一つもない」
人々は口々にシャルルを押し、一方のジョゼフを嘲笑った。
しばらくすると国王の私室から二人の男が出てきた。
出てきたのは二人の王子、ジョセフとシャルルで、ジョゼフは険しい顔を、逆にシャルルはにこやかな表情をしていて、部屋の外で様子をうかがっていた家人十数名は二人の様子を見て
『これはシャルル殿下に決まったかな?』
と、シャルルが次期国王に決まったと思った。
二人の王子はヴェルサルテイル宮殿から去ると、別々の馬車に乗りそれぞれの領地に帰って行った。
街道をゆくシャルルの馬車の中では、一人シャルルが頭を抱えながら、先ほどの会談の事を思い出していた。
「何故……どうして勝てないんだ!」
老いたガリア王が次期国王に選んだのは、兄のジョゼフだった。
政治の世界には魔法の私室の優劣など関係ない。
ガリア王の意を受けて、ジョゼフは国内の反乱分子の一掃に苛烈とも取れる政策を敷いた。
ジョゼフは自身が総長を務める『ガリア花壇警護騎士団』を広大なガリア全土に派遣し治安維持に努めさせると同時に、存在
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