第九十六話 それぞれの野心
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し状態で、生活費を稼ぐために大工の棟梁をしていたとか。人を惹きつける事に長けた人物で、無能ではないようです」
「ゲルマニアの力を削って、さらにトリステインの利益になれば、誰でもいいよ」
「そういう事でしたら、ピヤスト王は陛下のご期待に添える事と思われます」
「結構、それならば我がトリステインはゲルマニアと反ゲルマニア勢力との間に立って、商売をさせてもらおうか」
マクシミリアンは、空になったグラスにウィスキーを並々と注いで再び口につけた。
一方のペリゴールはブランデーの満たされたグラスに手を付けずにいた。
「ん? どうしたペリゴール。ブランデーは嫌いだったか?」
「畏れながら陛下。陛下はゲルマニアに対し『事』を構える御積りなのですか?」
「事を構える? それは戦争をするかという意味なのか?」
「御意」
「うーん」
ペリゴールの問いにマクシミリアンは何やら考え始めた。
以前、マクシミリアンはゲルマニアの内乱に対し、家臣たちが介入するように求めた際に、戦争の無謀を解いたことがあった。
ペリゴールはその時の事が気になり、本心ではどうなのか聞いてみたいと思った。
「そうだな……もし今のトリステインとゲルマニアが戦争になれば」
「戦争になれば……どうなのでしょうか?」
「まず、『戦闘』では勝てると思うよ」
「おお! それならば……!」
「でも、『戦争』では勝てない。トリステインの兵力では戦闘に勝っても、占領地の維持が不可能だ。少数精鋭って聞こえは良いけど、色々な弱点があるんだよ」
「むむむ」
マクシミリアンの言葉に一喜一憂するペリゴール。
参謀本部の見立てでは、ゲルマニア国内に侵攻してすぐに『攻撃の限界点』迎えるという。
その為、参謀本部ではもっぱら侵攻作戦よりも、国境付近での防衛作戦が研究されている。
「ゲルマニアの内乱を煽ったのは、本来は十分な準備を整えてから混乱している最中に戦争を仕掛けて西ゲルマニアを切り取るのが初期の計画だったけど、知ってのとおり、どこかのバカどもが暴走したおかげ、大幅な修正を余儀なくされたよ。クソッタレ……」
本心では諦めきれないのか心底悔しそうな顔をするマクシミリアン。
ペリゴールは若き王の様子を、ブランデーを舐めながら見ていた。
(お若い……陛下ほどのお年だと当然か。若者にとっては、人生全て輝かしいものに燃えるのだろう、かつては私もそうだった……」
ペリゴールは若い頃の事を思い出し、少し夏井かしい気持ちになった。
「そういう訳で、こっちから積極的に仕掛けると言う事はない。だからと言ってゲルマニアがトリステインを侮るというのなら、その報いは受けて貰うがな……」
最後にマ
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