第一章 【Re:Start】
第五話
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る。さらに六十。
次が、次が、次が――
悠長な考えが削り取られていく。不安の雫が次々に滴り落ち心に漣を立たせていく。
アリの巣をつついた時のようにわらわらと終わりなく獣が続く。
耐えない黒い波が押し寄せるようで、気づけば見渡す限りの外縁部の一帯が埋まっていた。
詰まらぬようにと押され幅広く広がった様は壁であり波であった。
それでもなお登りきれぬ後続が後ろに犇めき、一層広い黒い壁を作っていく。
静かに通達が走る。汚染獣の総数、千百六十二。外縁部にいる数は、凡そ二百八十。
見る限り数百の汚染獣。これで未だ半分にすら届いていないのだと、心に不安が染み出していく。
夥しい数のそれらが一斉に羽を開く。響く、蜂が耳元で飛ぶ様な生理的な嫌悪と恐怖を煽る羽音。
それを打ち消すようにヴァンゼの剄の篭った怒号が飛んだ。
『撃てぇ!!!』
剄が走る。
銃による弾幕、弓の掃射、壁を作る衝剄。
それらが一斉に汚染獣に向け放たれる。
全面にいた汚染獣がそれを直に喰らう。浮かしかけていた体は力の奔流に飲まれ、飛ぶことを諦めたように地を這って武芸者たちの方へ一斉に向かい出す。
思ったよりもそれは速い。一般人ならば全力で駆けても容易く捉えられてしまう速さだ。
それを合図としたように武芸者たちも動き、汚染獣へと向かっていく。
『可能な限り前に出すな! 狙える者は最優先で飛んでいる固体を狙え!!』
伝達されるヴァンゼの言葉通りにゴルネオは持ち場の武芸者たちに指示を出し、自らも錬金鋼を復元しながら戦況を見る。
飛ぼうとした個体の大半は阻止できたが、撃破という面で見れば先の一撃は前一列、壁の薄皮を剥がしただけだ。
羽が未熟なのか、それとも体力が無いのか。
一度飛ぶのを諦めた個体が再度飛ぼうとせず、比較的撃ち落としやすいことだけは有難かった。飛んでいる個体も余り高くは飛べないようで次々に撃ち落とされていく。
『――硬いな』
端子から聞こえたヴァンゼの呟きにゴルネオは心の中で同意する。
以後の指揮は各持ち場ごとの小隊に任せる。そうヴァンゼからの伝達が入る。
ヴァンゼは総指揮ではあるが、全体の流れを決めるといった役割だ。各小隊の下に一般武芸科生が割り振られた臨時の隊が設けられ、此処の戦闘はそこに任せられる。
小隊長であるゴルネオは隊の武芸者たちへ指揮を飛ばし、自分も汚染獣へと向かい錬金鋼に剄を走らせる。
先頭にいる汚染獣、その一匹へ圧縮した剄が飛び、甲殻と衝突し鈍く弾ける音が響く。
剄を受けた甲皮にはよく見ればわかる僅かな罅が入っていた。汚染獣の足を止めるだけの効果は無く、それでも邪魔だと思われたのか緩やかな弧を描くようにゴルネオへと汚染獣の進路が変わる。
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