暁 〜小説投稿サイト〜
SIREN2-End Of Destiny-
夜見島と怪異
絶望の始まり
斉藤閖 -24:00  『到着』  中迂半島/三逗港
[1/2]

[8]前話 [1] 最後
夏の日差しは、どこに居ても暑い。
例え都会から田舎に来ても、暑さと気怠(けだる)さは同じだと1人の女性は思った。

斉藤(さいとう)(ゆり)

東京のとある新聞社で働く記者だ。
だが記者だからといって、取材でここに来たわけではない。
今回は長期有給を取り、1人私情での捜査の為ここに来たのだ。

彼女の目的も、三逗港から見える夜見島だった。

しかしどこの漁港からも船は出ておらず、唯一頼りにしていたこの三逗港も船を出せない人しかいなかった。
夜見島は昔に消失事件が起こってから、誰も寄りつかなくなったという。


「最悪……」


重い荷物を抱え、苛立つ気持ちを吐き捨てる。
知り合いの雑誌社から教えてもらった夜見島行きの漁船も、今は出港中で居ないらしい。
近くに泊まれそうな宿も無く、もはや八方塞(はっぽうふさ)がりである。

そんな彼女に、誰かが背中を叩いた。
驚いて振り返ると、髪が長く片目しか見えない女性が立っていた。


「この辺の人……ですか?」


女性は首を横に振った。
どうやらこの地の人ではなさそうだ。
だが女性の荷物を見ると、同じように遠出してきたように見える。

何かを思いついたのか、閖は水平線の向こうに見える夜見島を指さした。


「もしかして貴方も夜見島に行くんですか?」


その言葉を聞いた途端、女性は激しく頷いた。
前髪の隙間から覗かせる目が、とても怪しく輝いている。


「わ……私、夜見島に行こうとしたら、船が無くて……」


偶然にも閖と同じ境遇に出くわしていた様だ。
そこで彷徨っているところ閖を見かけたという。


「じゃあアタシと一緒に行きません?ここで出会ったのも偶然ですし、今から夜見島行きの船を出してる人の所行こうとしていたんです」


近所に宿が無いか、とりあえず聞きたかった。
だが港には誰も居ない。
夏休みだからといって漁港は休みになるはずはないのだが。
女性は頷き、荷物を持ち直す。


「あ、そうだ。アタシ、斉藤閖と言います。お名前聞かせてください」


少しの間を置いてから女性は振り返った。


「わ……私は恵……安田恵(やすだめぐみ)といいます」




夜9時。
閖と恵の2人は、とある家にいた。
漁港で出会った1人の女性の家だ。


「この辺じゃ夜見島行きの船も出してないから、私の所の船じゃないとね」


その女性・木船(きふね)郁子(いくこ)は微笑みながら、2人に晩御飯を出していた。
閖は軽くお辞儀をして「ありがとう」と呟いた。

木船もこの漁港で働いており、漁港仲間の島田優助《しまだゆうすけ》が夜見島行きの船を唯一出しているという。

[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ