夜見島と怪異
絶望の始まり
斉藤閖 -24:00 『到着』 中迂半島/三逗港
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だが恵がなかなか引き下がらず交渉した結果、木船が特別に船を出してくれる事になった。
その前に夕ご飯を食べて行く事を勧められ、2人は家に来たのだ。
「狭い部屋だけど、ゆっくりしてね。私は船の準備してくるわ」
「あ、あの!荷物、この家に置いて行っていいですか?」
2人の後ろに積まれた荷物は、少し触れれば崩れそうな程あった。
木船はそれも笑顔で返事をした。
「夜見島に調査?」
「え?えぇ、まぁそうですけど……」
「この辺じゃ泊まれる宿は無いからねー。良ければここ、拠点に使っていいよ」
「ほ、本当ですか!?」
喋っていた閖を押しのけ、静かに食べていたはずの恵が木船に喰いつく。
「もちろんよ。じゃあ私、準備があるから」
そう言って部屋を出ようとした木船。
だが木船は扉を開けたまま、動かなくなってしまった。
「貴方達、本当に夜見島に行くの……?」
先程までとは違った、重く暗い声で2人に問いかける。
驚いた閖が木船を見ると、彼女の顔はさっきまでの笑顔とは違い暗く沈んだ顔だった。
「や……夜見島には、悲惨な事件があったとき……聞きます。一番夜見島にち……近いこの漁港も、何かあったのですか?」
恵の質問に、木船は振り返って答える。
「もう10年前になるわ……」
午前0時前に、木船達3人は夜見島に着いた。
少し海が荒れていたが無事に辿り着き、小さな港に降り立った。
3人は船に乗る間、一言も喋らなかった。
木船は運転に集中していたが、恵と閖は先程聞いた木船の話を考えていたからだ。
「ここが夜見島……」
「い……意外と、39年経ってるわりにき……綺麗ですね」
そんな考えを一旦忘れ港に降りた2人は、無人島とは思えない程しっかり残った港に目を丸くする。
木船は既に船に戻り、帰る準備を始めていた。
「私は三逗港に戻るわ。ここには居たくないし……」
「き……木船さん、あり……ありがとうございます!」
「また教えた番号に連絡してね。ここまで迎えに来るから」
島に残った2人はお辞儀をすると、船は島を離れる。
そのまま遠ざかる船を、見えなくなるまで見送った。
閖は恵を方を見て
「行こうか」
そう小さく呟いた。
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