第参話『プロローグ 広島』
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「………」
「………」
お互い無言のまま向かい合って座る。いつもならゲームをしたり今日一日の事をおもしろおかしく話したりするのだがいつもと違う俺の様子に澪も何かを悟っているのだろう。
しかし、何時までもこの状態のままではいけないので俺は思いきって噂の真意を尋ねることにした。
「………なあ、澪。お前、俺に何か隠し事してないか?」
「!!」
ビクッと澪の身体が少しはねた。
この反応から見て、恐らく噂は本当なのだろう。そして、俺が澪に何を聞きたいのかというのも本人も解ったのだろう。
「………」
「………」
また沈黙が続く。
「ゆうくんは……」
消え去りそうな声を出す。
「ゆうくんは……どこまで……知ってる…の?」
「喧嘩姫の…ことか?」
コクリと頷く。
「友達から話を少し聞いたくらいだよ。でも、なんでお前がそんなことやってんだ?」
「そ、それは……」
「……もしかして、俺のため……か?俺が『辻堂』だからか?」
辻堂は不良の世界では今や知らない奴が居ないほどの名字だ。なので、その手の輩にからまれる可能性が非常に高い。しかし、俺はそんなことは今まで一度もなく日々を過ごしていた。恐らく俺に危害が加えられる前に全て澪が片付けていたのだろう。
「まったく、なんでそんな無茶なことを…」
「だって…ゆうくん…には…普通の日々を……過ごして…欲しかったの……初めて出来た友達だから…」
涙を流しながら言う澪。人より力が強くて大人しい俺の幼馴染み。だけど、誰よりも友達を大事にしそのためなら自分が傷つく事をいとわない心優しい女の子。
「まったく、お前って奴は…」
俺はそっと澪の頭を撫でる。昔から澪は泣いたときはこうやって頭を撫でてやるとすぐ落ち着く。
「そうだ、澪。お前も一緒に湘南に行くか」
「………え?」
俺の突然の提案にすっとんきょな声を上げる澪。
「湘南に…?」
「ああ、どうせ高校生になったら帰ろうと思ってたんだ。だから、俺は一年だけこっちの高校に通うからお前が湘南の高校を受験して合格、そんで俺がソコに転入するっと、どうだ良い考えだろ?」
「………うん!」
「よし、決まりだな」
こうして俺は再び湘南に戻ることが本格的に決まった。
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