第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十二日:『待てば海路の日和あり』
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くて済みます
」
コンビニの小さな袋、それを持って空間移動して来た常盤台の制服にツインテールに……不機嫌さを覗かせた黒子。
「あら、やっぱり空間移動って凄いわね。普通に歩いたら、一番近くのコンビニでも五分は掛かるのに」
「そう便利でもありませんの。何せ、少しでも集中を乱すと誤差で大変な思いをしますのよ」
そう間を置かずに、この二人がやって来たそうだ。因みに、住所は『書庫』に載せているのだから、アクセスする権限がある人間や同僚ならば誰でも知れる。
――まぁ、十中八九、みーちゃんに『本当かどうか確かめてこい』って言われたんだろうけどさ。良いけどさ、それでも別に。
ことことと、ガスコンロに掛けられている小型の土鍋を見る。それに気付き、撫子はにこりと。黒子からビニール袋を受け取った飾利は、照れて俯く。
「あの、具合はどうですか? もし、食欲があったら」
「頂きます。一粒残さず、頂きます」
聞かれるまでもなく、昨日の昼から何も食べていない。迷う事など一切無く、頭を縦に振った。
「そ、即答ですか……じゃあ、味付けは塩と梅干し、卵のどれにしますか?」
がさがさと、ビニール袋から取り出されたもの。梅干し、卵。そして、元々それだけは備えていた瓶入りの塩が並べられる。
迷うところである。米本来の甘味を味わえる塩か、さっぱりとした果肉の酸味を織り混ぜた梅干しか。はたまた、濃厚な蛋白質の滋味と満足感の卵か。
「き……究極の選択過ぎる……! くっ、飾利ちゃんの鬼! 悪魔! 人でなし!」
「ええ〜?! お、お粥の具でそこまで言われるなんて……っていうか先輩、冷蔵庫にお米とミネラルウォーター以外入って無いじゃないですか。もう、やっぱり栄養片寄りまくりですよぅ」
等と、飾利とほんわか戯れるように笑い合えば――――
「それで? もう病気は治りましたの、対馬先輩。昨日の夜の風邪が、今朝には?」
「…………」
物凄く、冷たい眼差しで見詰めながら問い掛けた黒子。ほとんど、路上に落ちていた汚物を見るような。
そっち側の業界人ならば、礼を言わなければいけないくらい、完成した蔑みの眼差しで。
「いや、うん。あの、昨夜は本気で具合悪くて。ほとんど、記憶無いくらい。熱とかは計ってないけど……」
「ふぅん……そうですか。分かりました、固法先輩にはそう報告しておきますの。『半日で治ったみたいです』って。本当に対馬先輩は体だけは頑丈ですのねぇ、わたくしの怪我もそれくらい早く治ってくれればと思いますわ。本当に、かえすがえす、う・ら・や・ま・し・いですの」
と、居住まいを正して答えた嚆矢に対してそんな言葉で絞めた彼女だが、ちっとも納得して
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