第四話 一
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はゆっくりと立ち上がる。
その時、撃った反動で両腕と肩を痛めている事にアリスは気づき、「うっ……」っと激しい痛みで泣きそうになりながらも、懸命に堪える。
それから彼に精一杯に微笑んだ。
「アリスからのおねがい、もう、わたしはなかないから…… ナナシにめいわくをかけないから…… だから、だから。わたしをひとりにしないで、ずっとずっといっしょにいて?」
ナナシはそのアリスの願いに、頷く事は出来なかった。
所詮自分は人間では無い。いずれ、どこかで他の人間に殺されるか、デセスポワールに喰われるだろう。
だけど、アリスがこの世から消えてしまう。その時まで一緒に居よう。
そう思い、彼は口を開いた。
「あぁ、必ず傍に居る」
ナナシの答えに、果たしてアリスは満足したのかどうか分からない。
だが、彼女は少なくともナナシの言葉を聞いて、一瞬だけ悲しそうな顔をして涙腺が緩んでいた。
「今から彼女の死体を喰らうよ」
ナナシはそうアリスに言い、結月の死体へ近づく。
アリスは彼が結月を喰らう光景を見る事が出来ないので、背を向けて待った。
結月の死体へ近づいて、それから胸の辺りから喰らおうと眺めていたらある事に気づいた。
確かに、自分の尻尾で胸を貫いたのだが、それだけでは心臓部分であるコアを露出させるぐらいの深さの傷を負わせられない筈だ。
しかし、現にアリスは銃…… しかも、ピストルの小さな弾丸では到底貫通してコアを貫くなんて芸当はありえないだろう。
もしかして…… 彼女は自分で?
一体いつごろ意識が戻ったのか知らないが、きっと殺されたかったのだろう。
それで、自分で胸からコアを露出させて、わざと死んだ。
ナナシはそこまで考えると、いつか人並みの感情を手に入れたら、沢山涙を流してやろう。
そう思い、ナナシは彼女の身体に牙を立てた。
以前に見たモノクロのような霞がかった風景。
しかし、前回よりも今回は映像がクリアになっており、見やすくなっていた。
そこには、カプセルの中に入れられた少年の姿そこにあった。
どうやら、あの以前の手術からこの中に入れられたらしい。
見ると、少年の身体は両腕と両足、それに腹部の辺りに人間のモノでは無い何かがくっつけられている。
そのカプセル部屋の中に、一人の男が笑いながら入って来た。
男は、少年が入っているカプセルに近づくと、にやりと笑って一人で呟き始めた。
「ふふふ、やはり私の研究は完璧だったな。お前のおかげで、何とか人類は持ちこたえる事が出来そうだ。第二世代の適合者として……な。唯一の欠点は、選ばれた人間しか生き残れない事だが」
彼の低い声を聞き、心の中でナナシはある人物の声に似ていると思っ
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