第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第四節 渓谷 第五話 (通算第20話)
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ユを出すか」
「それがよござんしょ。あっしは、こっちに残りますがね」
わかったとサラートに応え、ひっくり返ったランバン機を起こすのを手伝ってやる。カミーユとサラートが整列して二人を待っていた。
「よしっ、全機帰投する。晩飯は、俺が奢ってやる」
「やったー!」
「ランバンは帰ったら腕立て百回した後でな!」
「わははははははっ」
一番はしゃいだのは、当然ランバンだった。豪快に笑うサラート。小声で抗議をするランバンに、フラガも軽口をたたいている。フラガに悔しさはなかった。
その間、カミーユは一言も口を利いていない。信じられないのだ、自分の感覚が。説明できないのだ、あの確信が。自分の鼓動が外から聞こえてくるかの様な、不思議な感覚。さっきまではあれほど鋭く感じられていたのに、今はもう、晴れた霧の様に何処かに失せてしまった、あの感覚。
「俺は……本当に隊長を撃墜したのか?」
撃墜の実感が全くない。こんなことは初めてだった。
「よくやったよ、〈チャンピオン〉」
横を見ると、サラートの《ジムU》が親指を立てて笑っているように見えた。
「副長……」
サラートがお肌のふれあい会話をしてきた。慌てて、通信を切り替える。
「隊長も承認済みだが、お前をある作戦に就かせたい。オレらとは部隊が変わっちまうが、どのみち部隊編成が変わる。」
「さく…戦?」
唇が乾いていた。極度の緊張で、軽い脱水症状のようになっているのか、体が熱かった。バイザーを空けて、空気を吸い込む。シート後部にあるドリンクを取って喉を潤した。
「そうだ。ブレックス准将直々の差配でな。ラビアンローズへ行ってもらうことになる。」
「ラビアンローズ……」
話には聞いているグラナダ直属の艦隊のことだろうか?噂によれば防衛大隊から艦載モビルスーツパイロットを出すとのことだった。俺が?艦隊直属?カミーユは少しだけ混乱していた。
「詳しい話は帰投してからする」
サラートは一旦そこで話を終えた。
「帰投するぞ!」
「諒解!」
ランバン、サラート、カミーユが唱和する。十六基のメインノズルが瞬いて、モビルスーツが月の地表を疾駆した。
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