第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第四節 渓谷 第三話 (通算第18話)
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フラガの乗る《ジムU》はグラナダに配備された機体ではわずかしかない新造機だった。新造機といっても、旧型の《ジム》からの改修機と変わった所はなく、ジム乗りには馴染みがいい。違いと言えば、タキム製の新型熱核反応炉を搭載しているので、若干ジェネレータ出力が上がっていた。それとパイロットにはあまり関係がないが、追加設計部分が一体成形になっている分、メンテナンスが楽なのだとアンナが言っていた。
フラガはどうも《ジムカスタム》や《ジムキャノンU》といったオーガスタ系のモビルスーツが好きではない。本来なら、地球連邦軍のお下がりとはいえ、《ジムカスタム》が今期より配備になる筈だったが、ティターンズの目を憚って地球連邦軍は配備を渋っているのだ。フラガ個人としては歓迎である。反応速度が早い方が機動としては有り難いが、グラナダには機体に慣れている暇はない。自分一人ならば、それも可能だが、新兵を新しい機体に馴染ませるのには時間が掛かる。だからパイロットは機体の乗り換えを喜ばないのだ。フラガが好きではないのは個人的な理由からだったが。つまり、デザインが気に入らないのだ。
第一そんなに台所の余裕があるのなら、人員の増強をしてもらいたいと思っていた。たかが一個艦隊で、月面を防衛するなどという隙間だらけでは、ジオンの残党どもに何をされるか判ったものじゃない――これは思っても口に出していえることではなかったが。
グラナダにはジオン共和国軍が駐留しているからである。
「ランバン、寝るにはまだ早いぞ?」
「大丈夫です。カミーユには負けません!」
ランバンが二、三度左右の肩部スラスターを噴かしてフラガの左後方につける。思わず苦笑する。こんな所でスラスターを使う奴があるか!と怒鳴ってやりたい気分だが、演習とはいえ、サラートが認めたカミーユが相手にいる。フラガといえども、サラートの勘は無視できない。通信は極力控えるべきだった。
フラガの《ジムII》が天頂方向に腕を伸ばす。接触回線でランバンに指示を出した。
「ダミー、コントロールモードCで、天頂に射出!フォーメーションD!」
「ラジャー!」
二機の《ジムU》のマニピュレーター基部にセットされたマルチランチャーからダミーバルーンが放出されると急速に膨らみ、モビルスーツサイズになった。それらは不規則な動きをしながら移動する。形はほぼジムの形である。バックパックに相当する部分にスラスターが備わっていてその軌道をランダムなものにしていた。
「こいつに引っかかってくれれば面白いんだがな」
コクピットで独り言を呟くのは軍に入りたての頃、よく教官に怒られたものだった。「口を動かす暇があったら、機体を動かせ」が教官の口癖だった。教導隊に入り、その後退役したと聞いていたが、今頃何をしているやら――首を振って余計な雑念を払う。こうい
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