アカデミー編
女の子
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を取った。
・・
保健室には、誰もいなかった。
いたら面倒くさかったから丁度いいと思いつつ、棚から勝手に包帯と消毒液を拝借し、水道で傷口を軽くすすぐ。
体術だから、どちらかというと青あざの方が多くあったが、そのあたりの手当ては無視する。
こういう時は打撲痕よりも、傷口から菌が入り込んで破傷風が起きるほうが怖いのだと、カトナは知っていた。
消毒液がしみて、つんとした匂いが香る。
この独特の匂いは好きだ。優しくない、甘くない。けれど、ああ、これだと感じてしまう匂い。
そして、それ以上に感じてしまう、血の、匂い。
……自分の嗅覚がこれほど敏感であることを後悔する日が来るなんて、思いもしなかった。
気に入らない、気に入らない。女である自分が気に入らない。苛々する。
手当てをし終えて石鹸の匂いがする指をかみながら、廊下を歩く。
誰ともすれ違いたくなかった。気分は最悪で誰かに出会ったその瞬間、無関係の相手を怒鳴りつけてしまうような気がした。
分かっている。誰も悪くない。強いて悪い人間をあげるとするならば、それは自分だ。
誰も何も悪くない。なのに、苛々するこの気持ちはどうも抑えきれなくて。
「カトナ」
誰かに、無償に、ぶつけたくなってしまうのだ。
最悪のタイミングだと、内心で言葉を吐き捨てた。
今、声を出せば、思ってもいないようなことを出してしまいそうな気がして、口をつぐむ。
いつもの数倍の眼力で睨み付けてくる彼女に動揺しながらも、ネジは尋ねる。
「調子悪かったようだが、大丈夫か?」
「…平気。男に比べたら、治り遅いけど、平気」
苛々、苛々。
勝手に飛び出た、男に比べたらという、自分自身の皮肉にさえ苛立った。
ああ、こんな言葉出てほしいわけじゃないのに。
ネジがいつもとは違うカトナに戸惑って。そして、皮肉がわかっていながらも答えを返す。
「なんでそこまで、お前は自分を卑下するんだ。くのいちでも、十分強くなれ…」
一瞬、目の前が真っ白になって、次の瞬間、真っ赤になった。
あの時みたいに。
「女だったから!!」
思わず怒鳴りつけたカトナに、ネジは目を見開いた。
いつも無表情で、何事にも穏やかで冷静沈着な彼女が声を荒げたという事に、不覚にもネジは動揺して黙り込む。
カトナはそんなネジの様子に気が付かないまま、怒鳴り付ける。感情を一気に垂れ流させる。
「私が、女だったから、四代目火影は、私の中に、九尾を、封じなかった!!」
カトナは生まれて初めて、そのままの気持ちを出した。
普通の彼女だったら、絶対に言わなかったかもしれないけれど、今の彼女は普通ではなかった。
女であるというどうしようもない
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