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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十五話  弔悼
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、味は如何でした?」
レムシャイド伯がニンマリとした。
「美味かった、酒こそ人生の友、良い酒は人生を豊かにしてくれる、その通りだと思った」
羨ましいと思った。そんな事を思えるワインを私も飲んでみたい。バセット大尉も羨ましそうな表情をしている。

「オーディンに来るのも年に三度、ワイン、ブランデー、ウィスキーの品評会が有る時だけだ。他は宮中の行事だろうとも平然と無視していたな」
「それはちょっと問題になったのではありませんか?」
委員長がちょっと心配そうに言うとレムシャイド伯が笑い声を上げた。

「本来はそうなのだがあの男の場合はフリードリヒ四世陛下がそれを許しておられた。陛下は誰よりもあの男の造った酒を愛飲しておられたからな。咎める人間が居ても放っておけ、それだけだった。いや、もっと美味い酒を造れとは言っていたな」
「……あの方らしいですね」
レムシャイド伯が少し訝しげに委員長を見たが何も言わなかった。委員長はココアを飲んでいる、レムシャイド伯の表情には気付かなかったようだ。不思議な事だ、委員長の口調には嫌悪も軽蔑も無かった、恨んではいないのだろうか……。

「良い酒を造るには良い原料が要る、領地経営に熱心な男だった。豊かになるためではなく美味い酒を造るために熱心に領地を経営していた。奇人、変人と領民達からも言われていたが……」
レムシャイド伯が言葉を途切らせた。

「本当はもっとも貴族らしい貴族だったのかもしれん。何か一つ打ち込めるものを見つけそれによって領地を豊かにし領民を豊かにする。日々の生活に追われる事の無い貴族だから出来る事だ。皆がそうであれば貴族達は滅びずに済んだ……」
諮問委員長は何も言わなかった。ただ黙ってソファーに座っていた。レムシャイド伯と二人、まるで貴族達を悼むかのようだった。



宇宙歴 796年 10月 30日  ハイネセン  同盟議会  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



ガクっと身体が揺れて目が覚めた。隣を見るとトレルが“寝るな”と口を動かした。折角良い気持ちで寝てたのに起こされたようだ。トレルは非難するような目で俺を見ている。溜息が出た、眠いんだよ、俺は。昨日はシェーンコップ達ローゼンリッターと遅くまで飲んでいたんだ。まあ最後はノンアルコールだけどな。イゼルローン要塞を攻略しようと言ってたな、どうやら暇を持て余しているようだ。何か良い仕事を見つけてあげないと……、オーディンに大使館をおいてそこの駐在武官とか如何だろう? 女性問題を起こして強制送還かな?

周囲を見回すと変な小太りの中年男が質問するところだった。惑星マスジット選出のヴァルカン・ドレイクだったな、カマキリ男のバリードとは対照的な外見を持つ男だ。もっとも中身はバリードと変わらない、政府を困らせる事が自分の仕事
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