第二話 品定めの時間
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こいつ、中学の時硬式クラブで日本代表に選ばれてんだよ?」
なぁ?
そう言って、紅緒はにぃと笑って権城を見上げた。
「まぁ、そうですけど」
権城も、にぃと笑って返事をした。
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権城英忠の球歴は、中々に輝かしい。
小学生の頃は、高円宮杯学童軟式野球大会にただ一度出場しただけだったが、中学時代、強豪として知られる武蔵中央シニアに入ってからは覚醒。小学生時代から名を轟かせていた猛者達を差し置いてレギュラーになり、中3の時には3番打者。
ピッチャーも務め、全国大会での活躍が認められ日本代表に選ばれると、そこでも投打に大活躍。
高校は20校からの誘いがあったが、全て蹴って、南十字学園に帰ってきた。
そもそも、最初からそのつもりで、都内のチームに行ったからだ。
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「おい、権城」
紅緒はニタニタしながら、権城を見上げる。
「さっそくさ、お前の実力見せてよ。」
「と、言いますと?」
「勝負しようよ。あたしとさ。」
権城は頷いた。
「いいですよ。やりましょう。早速。ちょうど、ユニフォーム持ってきてるんで。」
譲二と哲也はおぉー、と声を上げた。
「久しぶりに面白いもん見れそうだな!」
「紅緒と、日本代表の坊主との勝負だとよ!」
デカい声で2人が言うので、グランドに居る全員に状況が知れ渡る。練習の最中だっただろうに、内外野がポジションに就き、シート打撃の体勢を作ってくれる。やたらと、察しが良い。
「日本代表だって?」
「へぇ、それは凄いや」
「お手並み拝見」
一気に、品定めするような視線を受ける権城。
しかし、権城に退く気はない。
ドカッ!
地面に鞄を下ろし、ユニフォームを取り出した。
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「たまたま、キャッチャー道具を持ってきてましたので、私が受けて差し上げましょう」
ジャガーはニッコリ笑って、その全身に防具を付ける。ユニフォームは持ってないらしく、体操服の上に付けるのは中々にダサい。しかし、権城としては、こんな唐突な勝負にジャガーまで付き合ってくれるだけでも有難い。同級生相手に投げる方が気を遣わなくていい。
「ジャガーお前、キャッチャーだったっけ?」
「ええ、スガタお坊っちゃまの球をお受けしないといけませんので。お坊っちゃまは今、中等科で野球部に所属してらっしゃるのですよ」
「あぁ、“お務め”の関係もある訳か」
防具フル装備のジャガーと、権城はウォーミングアップを始める。糸を引くようにジャガーのミットに白球が突き刺さる。パァン!と乾いた音がする。
「良いですね。さすが権城さん。」
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