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Ball Driver
第一話 帰ってきた男
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誇らしげに語る権城を見るジャガーの視線は優しく、そしてどこか生暖かかった。
その視線には、まだ権城は気づいていなかった。



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「ちょっ!?南十字学園の生徒は運動部と文化部の掛け持ちが基本で、それぞれの部は週3回の活動だってェ!?」
「あれ?権城さん、知らなかったんですか?南十字学園は文武両道を是としていますので、運動部と文化部両方に所属して、平等に活動しなければならないんですよ?」

入学式諸々が終わってから、さっそくクラブ見学に回ろうとしていた権城は、HRで配布されたプリントを見て愕然としていた。
ジャガーはそんな権城を、微笑ましく見ている。

「こんな規則あるの知らなかったんだけど!えぇ、これマジかよ……」
「まぁ、クラブ活動が始まるのは中学からですから、その時ここに居なければ分かりませんよね。」

割と本気でショックを受けている権城の肩を、ジャガーはポンポンと叩いた。

「でも、高校生のうちに色々しておいて損はしないと思いますよ。野球ばかりが人生ではありませんし。それに、活動が週3回というだけで、別に甲子園を目指しちゃいけないという訳ではありませんから……」
「ま、まぁな!そうなんだけどな!」

ジャガーの言いたい事は権城も分かった。
確かに、週3でも甲子園には行ける。……可能性はある。ゼロではない。
別に、毎日毎日ストイックに土に塗れる事でしか、結果は出ないという決まりは無いんだし。
……中学の時の同僚が進学した、帝東や吉大三の話を聞いた後では、やたらとヌルい話をしているように感じられるけど。

「ほら、そんな風にお口を開けてないで、早くグランドに行きましょうよ!今日は確か野球部の活動の日ですから!」
「あ、ああ!じゃあ早速……」

やや強引にジャガーに背中を押されて、権城はグランドへと向かう。これが、権城英忠の、南の島での青い春の幕開けだった。





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