ヤン代将のある一日
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、動く領地でもあったが維持費も莫大なものがかかる。
そんな貴族の見栄の象徴である艦隊母艦の下賜を断った事は貴族層からの反発と、平民層から好感となって同盟にまで伝わっていた。
同時にそれは、帝国内部の貴族層と平民層の対立を示唆している。
「『像一頭殺すのとネズミ一万匹殺すのはどっちが大変だ』なんて声もあるみたいですが、考え違いもはなばなしいですね。
何が起こるか分からない宇宙空間にて余力の無いネズミの群れがバラバラに逃げた所で、レミングスの集団自殺に過ぎないのですから」
緑髪の副官が原作からの言葉を使って皮肉る。
艦の大きさは維持費の大きさもあるが、同時に生存能力の向上も高くなるのだ。
同盟軍優勢の戦局の推移は、防衛戦で拠点が近くにあるのと、それ前提で護衛艦をはじめとした優位な建造技術からくる艦体性能差と、その護衛艦運用を司る艦隊母艦の使用という会戦前の状況の優位によって支えられていた。
だからこそ、帝国軍が高速戦艦を戦場に投入した所でどうとでも対処できる。
「戦う前から勝つか。
あの人も730年マフィアの一員だけあるよ。
士官学校卒業が技術過程というのが不思議で仕方なかったけどね」
ヤンの言葉であるあの人は緑髪の副官の生みの親なのだが、士官学校卒業時は技術将校だったというのは有名な話である。
まぁ、アンドロイドやドロイド推進の為の適正職でもあるからある意味仕方が無い。
それが730年マフィアとつるんだ理由が、彼らを使ってのデータ取りだったという。
で、同盟存亡の時代に将才を見せていた彼を730年マフィアが見逃す訳も無く、同盟防衛大学校で戦略研究科において勉強する事を命じられ……と、今のヤンのコースはかつての人形師の出世コースでもあったのだった。
だからこそ、ヤンを730年マフィア最後のお気に入りというあだ名がついて回る事になるのだが。
「あの人の公演は独特だったなぁ。
『前提の引き算』だっけ?
あれはまともな軍人の発想じゃないよ」
ラップ主計長の回顧の声にヤンも同じ公演を聞いていた事を思い出す。
元ネタは自己を成り下げる事によってキャパシティーの増大につなげるなんて物語から来ているのだが、彼はこの言葉を戦略思考として使って見せたのだった。
問題が発生した時、その問題の前提を容赦なくぶち壊す事によって、問題そのものをなかった事にするという思考法は彼によって主導されたイゼルローン要塞破壊作戦によって実現する。
「イゼルローンに要塞が作られつつあるという情報は、かなり早い段階で同盟情報部はつかんでいたらしい。
それを妨害しなかったのは、その要塞を完成前に奪ってしまおうという軍部と政府のスケベ心があったらしいからな。
そんなスケベ心を一顧だにせず、
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