第五章
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からだよ」
答えはこれであった。
「誰もな。わかったな」
「わかりました。というよりは」
「というよりは」
「わかっていました」
それが答えだった。構成の。
「僕も」
「そうか。それでどうするんだね」
「とりあえず話は続けていきます」
自分の信念を捨てるつもりはないということだった。
「一人でも」
「頑張ってくれ」
今までで一番有り難い言葉だった。力になるものではないが。
「それではな。もうそろそろ行かなくては」
「お仕事ですか」
「そうだ。済まないな」
政治家は忙しい。これは既に決まっていたことでもあった。
「ではこれでな」
「はい、これで」
話が終わった。構成は一通り話をして回ってみてもどうにもならないことに絶望しやりきれない気持ちになっていたがその彼の携帯に。思わぬ電話が入って来た。
「えっ、兄さんが」
兄の英雄が帰国したというのだ。彼はそれを聞いて信じられなかった。
「そんな。どうして」
何かあったのかとも思い慌てて家に戻る。そこにいた彼は何と。構成は彼の姿を見て呆然とした。
「何で帰って来たんだよ」
「急に人事で決まったんだよ」
何と口髭を生やしていた。それに驚いたのだがそれだけだった。
「人事で!?」
「ああ。それも急にな」
こう弟に対して語るがその声は明るいものだった。
「決まったんだよ。大阪の地方連絡部に行くことになったんだ」
「地方連絡部っていったら」
「ああ、人材確保のな」
要するに自衛官を募集する仕事である。自衛隊は志願制なのでこの募集は非常に大きな意味を持っている。これをしないと人が集まらないのだ。
「それに行くことになったんだ」
「また急に決まったんだね、本当に」
「俺も驚いてるよ。髭も剃らないとな」
笑っての言葉だった。
「髭を生やしていると募集担当は出来ないからな」
「それはそうとさ」
「んっ、何だ?」
「兄さんはこれから自衛隊はどうあるべきだと思っているの?」
「何度も言うがそれは言えないな」
答えようとはしない英雄だった。
「それは前にも言っているな」
「うん」
「俺達が言ったらまずいんだよ」
「まずいんだね、やっぱり」
「そうだ。また俺達に変えることもできない」
表情が真剣なものになっている。その真剣な顔での言葉だった。
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