エピローグ:人は何の為に
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、目の前数メートル先のボクを捉える。
『―――――。』
ミストユニコーンは鳴かない。ゆえに、ボクを見てすぐのその姿からは、その心中の感情を察することが出来ない。
しかし、次第にその瞳に動きがみられた。
揃って、驚きに見開かれたのだ。
その瞬間ボクは、ルビーに初めて出会った時のように非好戦的モンスターらしく怯えられて逃げられることを覚悟した。……同時に、胸を引き裂かれるような痛みの覚悟も。
しかし。
次にその二匹の目に浮かんだのは。
――涙、だった。
普通のモンスターは流さないはずの、その涙。
さらには。
『――――ッ!! ――〜〜!!』
声無き叫びが聞こえる。
涙を流しながらの声が聞こえる。
彼らとボクは視線を交わし……感じる。
懐かしい、その眼差しから感じるその声は…………ボクとの再会を喜ぶ声だった。
目の前の二匹は、他でもない、ボクの使い魔のルビーとベリーだった……!
「ぁ、ぁぁ……〜〜〜ッ……!!」
ボクもまた、声にならない声が喉から漏れだし、顔を両手で覆って膝から崩れ落ちた。
ボクもまた、彼らと同じようにあふれ出る涙を止めることが出来なかった。
「あぁっ、ああぁぁあぁ……!!」
遅れて、込み上げてくる感情を抑えられない泣きじゃくる声が滝のように溢れ出す。
「キリトッ……キミは、本当にっ……!!」
救ってくれた。
ボクだけではない。この世界だけではない。
死んだはずの、ボクの友達をも救ってくれた……!
本当に、ボクの全てを、救ってくれたのだ……!
そうしてボクは滂沱の涙を流すも、二匹は近づいてこようとはしない。
よく見てみればその蹄の足元には、システム的な模様の小さな魔方陣のようなものが出現していて、それは二匹の足を束縛しているようだった。恐らく、この世界がクリアされプレイヤーがログアウトするまでの間、モンスターがプレイヤーを襲わないようにする為のカーディナルによる配慮なのだろう。
なら、ボクから近寄るしかない。
しかしなおも溢れる感情の波を抑えられず、崩れた膝から立ち上がることが出来ない。
その膝を引きずるように進みながら、もどかしく、もどかしく、自らの足で彼らの元へ。
『〜〜ッ!! 〜〜ッ!!』
二匹のミストユニコーンの、涙を流す声無きボクを呼ぶ叫びは続く。
足は動かずとも、体を必死に前に傾け首を伸ばし、ひたすらにボクとの再会を求めている。
ボク達の間を隔てる、たった数メートルの空白が果てしなく遠く感じる。
けれど、もうボク達の間を邪魔するものはなにもない。
一度道を外れたボクが、再び人として、マーブルの隣に並んで歩き始めてどれほど
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