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SAO−銀ノ月−
第六十七話
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て俺がいる高所に佇んでおり、あたかも決闘のような様相を呈していた。

 『亡霊』が先手を取って仕掛ける……その異形の長い腕を用いて、フェンシングの要領でレイピアによる連続突きを――いや、細剣の上位ソードスキル《スター・スプラッシュ》が俺に迫り来る。高速の八連撃がレイピアの弱点を補った異形の腕で放たれ、システムスキルが無い筈なのにアインクラッドでの速度とも違わない。

「――抜刀術《十六夜》!」

 その八連撃を迎え撃つのは俺が最も得意とする技、抜刀術《十六夜》。どちらが先にその一撃を敵の身体に当てるか、という決闘は、『亡霊』の方がスピードは速かった。

 ――だが、ここはもうアインクラッドではない。

「ブースト!」

 抜刀術《十六夜》を『亡霊』に対して狙いをつけながらも、風を起こす初期呪文を最後まで唱え終わる。アインクラッドにはない……ここがもうあのデスゲームではないと証明するかのように、俺の言葉とともに俺と『亡霊』に対して暴風が吹き荒れていく。

 『亡霊』の速度を落とすように、俺の抜刀術の速度を上げるように。

 結果としてその一撃は――日本刀《銀ノ月》が、『亡霊』の姿を切り裂いていた。

「ふぅ……」

 目の前で渦巻いていく黒色のリメインライトを見ながら、俺の脳裏に一つだけ考え事が浮かんで来ていた。――この『亡霊』と俺は、あのデスゲームで戦ったことがあっただろうか、と。ラフコフの関係者で、あのレイピア捌きを見たことがあった気がしていた。

 更に言うならば、俺がここに来た時に感じた《奴》の――PoHの気配は本物だった。他にも『亡霊』はスプリガンだったにもかかわらず、戦闘中にプーカの《呪歌》によって動きを封じられたり、怪物のように息を響かせるしか出来なかった『亡霊』が、PoHに化けている時のみ雄弁に話していたり、まさかプーカとしてログインしている本人が、今もなおこの洞窟に潜んでいるのではないか……?

 更に言うならそもそも、今回襲って来た『亡霊』と『幻影』とは何だったのか……

 ……いや、そんなことを迷うのはもう後で良いのだろう。今は最後に少しだけ、まだ帰って来られない人々を助け出して、アインクラッドを完全に終わらせるだけだ。

「ショウキ!」

 駆け寄って来たリズとレコンと掌を叩き合いつつも、遂に俺たちは長かったダンジョンを抜け、《蝶の谷》に向けて飛翔を再開していった。

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