第六十七話
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聞いた生き残っていた『幻影』たちはたじろいでいる。仲間が二人、目の前で呆気なく真っ二つにされた、という衝撃が覚めやらぬ間に追撃を――
「……ッ! 縮地……!」
――しようとしたものの、その高速移動術が発揮されたのは後退。洞窟の中でも盛り上がっていて、高所になっているところにまで移動すると、近くにあった柱となるまで巨大化した鍾乳石のような物に身体を預けながら頭を抑えた。《恐怖の予測線》のデメリットとでも言おうか、一定時間の後に頭痛が走ってしまい、その効力が切れてしまう。
「……今だァ!」
『幻影』たちの誰かが発した号令の下、一斉に俺がいる鍾乳石のある高所へと迫って来た。様子がおかしい俺に全員でかかれば、勝算はあるのだと踏んだのだろう。……それが狙い通りだとも知らずに。確かに《恐怖の予測線》の効果時間終了の頭痛は、少しの間ながら動きが封じられてしまうのは、もちろん多大なデメリットである。だが、そんなデメリットがあろうとやりようはある。
「ふっ……!」
例えば、デメリットを見せてそれを撒き餌とする、とかだ。振動剣となったままの日本刀《銀ノ月》を振り抜き、近くにあった柱のような鍾乳石に向かって剣閃が二筋煌めくと、日本刀《銀ノ月》のスイッチをもう一度押して振動を終えてから、鞘にチャキンと音をたてて納めて、鍾乳石はゆっくりとその洞窟の柱という役割から抜け出した。
……有り体に言うと、洞窟の柱すら日本刀《銀ノ月》はバターのように切り裂くと、柱だった鍾乳石は重力に従って、高所から低所に向かって落ちていく質量兵器となった。俺がいる高所から、『幻影』たちがいる低所へと。
「うぉわぁぁぁ!」
洞窟を支えるほどにまで成長した鍾乳石は、俺に向かって攻め込んで来ていた『幻影』たちは巻き込まれていく。質量兵器だけでは『幻影』たちのHPを削り取ることは出来ないが、このまま転がっていけばゴールとなる場所は一つだ。
「せいやぁ!」
リズも俺の狙いに気が付いたのか、自分たちと戦っていた『幻影』たちを、無理やりメイスで鍾乳石の質量兵器の前に弾き飛ばした。そのまま『幻影』たちは全員、質量兵器に巻き込まれて転がっていくと……
「ゴールは川。レコン曰わくボスモンスターがいる、な」
翼で飛翔することが出来れば良いのだろうが、生憎とここは太陽の届かないダンジョン。『幻影』たちは柱ごと川に落ちていき、その後はどうなったかは分からない。……結果は目に見えているが。
趣味の悪い『幻影』たちはもういない。一人残らず川の底だろう。だが……
「……さあ、来いよ」
そんな『幻影』たちを生み出した、趣味の悪い制作者が……『亡霊』が残っている。先程まで両手に持っていたレイピアを片手にだけ構えながら、質量兵器を避け
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