第六十七話
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月》の刀身を発射する引き金とともに仕組まれた、柄についている謎のスイッチのことを思いだす。自爆スイッチだとしてもおかしくないと、決して押さないことを誓ったスイッチが。
「ええい、ままよ……」
恐る恐るリズの言う通り柄にあるスイッチを押すと同時に、特大の予測線が俺の身体の全域を覆った。これは一度体験したことがある――ヒースクリフも行っていた、大盾を直接相手にぶつける攻撃方法、シールドバッシュだ。迫り来る恐怖に対して俺は反射的に、日本刀《銀ノ月》をその大盾に向かって振り抜いた。
勢いと威力を減じつつ後ろに退がるのが目的だった、その日本刀《銀ノ月》による攻撃は――大盾ごと、その向こうにいた大盾持ちのプレイヤーすらも切り裂いていた。
「……え?」
「な……?」
俺とその大盾を持っていたプレイヤーの疑問の声が重なった。日本刀《銀ノ月》はその『幻影』の姿とする魔法すらも斬り裂いたのか、そのプレイヤーの格好はただのノームへと戻っていた。一瞬だけ呆気に取られてしまったが、すぐに意識を集中させると、そのノームに向けて袈裟斬りを放った。ゴテゴテと飾り立てられていた堅牢そうな鎧を、日本刀《銀ノ月》はそんなもの無かったかのように切り裂き、大盾を持っていたノームは真っ二つになるようなエフェクトを発生させ、その身をリメインライトとして散らしていった。
「せっ!」
盾持ちのノームに攻撃している隙を狙っている槍使いを関知し、その一突きを足刀《半月》で蹴りつけてながら日本刀《銀ノ月》を鞘にしまい込んで、体勢を整える為にクルリと一回転しながら、蹴りつけられて怯んでいる槍使いに狙いを定め、再びその日本刀《銀ノ月》を抜きはなった。
「抜刀術《十六夜》!」
堅牢なノームですら何の抵抗もなく切り裂いた今の日本刀《銀ノ月》に、軽装備の槍使いが耐えられる筈もなく、上半身と下半身の境に一筋の光が疾り、そこが分かたれる前にリメインライトに昇華された。
スイッチを押してから疑いようもなく、日本刀《銀ノ月》の切れ味が途方もなく上がっている。それこそ、重装備のノームの防御を容易く切断するほどに。元々切れ味を至上とした武器である日本刀だが、敵の盾ごと鎧を切り裂くような真似は出来るはずもない。
――その切れ味の正体は『振動』。現実世界で言うならば、最強の切れ味を持つ工具であるチェーンソーのように、スイッチを押してからの日本刀《銀ノ月》の刀身は微細ながら高速で振動していた。……言うなれば、『振動剣』といったところか。刀身は超高速で振動し、この振動によって物体を切断するために、通常の日本刀を遥かに越える威力を持つに至る。
シルフが翼を使って飛翔する時のような、弦楽器のようなキィィィィンといった音が日本刀《銀ノ月》が響き渡り、それを
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