第六十七話
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横に薙払うと、連撃とばかりに返す刀で斜めに《銀ノ月》を振る。見えないところに息を付かせぬ暇もない連撃を叩き込んでいる自分は、第三者から見れば何とも滑稽な剣舞だっただろうが、その実態は一撃一撃が正確に『亡霊』のHPを削り取っていく。
「ア゛アアッ!」
形容しがたい叫び声とともに放たれた長い腕による『亡霊』のラリアットを飛んで避け、日本刀《銀ノ月》を鞘にしまいながらその長い腕に飛び乗ると――何もないところに浮かんでいるようで不気味だが――今し方鞘に納めた日本刀《銀ノ月》を、頭があるだろう位置に狙いをつける。
「抜刀術《十六夜》!」
得意技による銀色の一閃が『亡霊』の首を目掛けて煌めいた。しかしその感触は切り裂いた感触ではなく、剣と剣がぶつかり合っている鍔迫り合いの感触。もう片手に持っていたレイピアで防いでいるのか、と推測した俺は、乗っていた腕から飛び降りて距離を取った。距離を取るために飛んでいる最中、追撃にレイピアを伴った突きを『亡霊』が行って来たものの、足刀《半月》による蹴りでレイピアを弾き、洞窟の岩場に着地する。
そしてMPの残量が少なくなってしまったのか、『亡霊』は姿を消す呪文を解除すると、日本刀《銀ノ月》で斬られた傷だらけの身体を俺に見せた。
「なん……で、ドコにイルか……ワカル……?」
「……教えてやる義理はないさ」
始めて『亡霊』の仮面の下から吐息だけでなく、カタコト混じりの言葉が紡がれていく。何故、姿を消す魔法を使用しているのに、自分がいる場所が分かるのか――という『亡霊』の問いに、俺は一言でそっけなく返す。それと同時に、『亡霊』には何故いる場所が分かるのか分からない、という確信を得る。
……その問いに対する答えは単純、『亡霊』は完璧に姿を隠すことが出来ていないからだ。もちろん、改造の疑いすらある『亡霊』の魔法が不完全という訳ではない。ただ、姿を消そうとも場所が分かるように、マーキングをされているだけだった。
『亡霊』がPoHの演技をして俺を追い詰めた時、レコンが黒色の煙によって視界を封じ込めて足止めを行った。だがその黒煙は足止めのためだけではなく、姿を示すマーキングの役割も持っていた。何も俺がやられている最中、リズとレコンはただ黙って見ていた訳ではない。二人は『亡霊』が行っていたトリックを見破り、俺に伝え、破る手がかりを残していた。
――黒煙は服に付着する。『亡霊』がどんなに魔法で姿を消そうとも、そのスプリガン用の黒い服には、レコンが発生させた黒い煙によって付着した汚れが染み付いていた。姿を消していない状態では、スプリガン用の服と保護色になって目立つことはないが……姿を消すと、くっきりとその汚れが浮かび上がる。後はその付着した汚れから、『亡霊』の全体像や攻撃を見切れば
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