第六十七話
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「リズ、レコンのことを頼む」
俺の背後でコクリとリズが頷いたことと、黒煙とともに足止めをしてくれたレコンの無事を確認すると、俺は《奴》に向かっていく。カウンター気味に突き出された《奴》の包丁を、そのまま無視して――そしてそのまま俺の身体をすり抜ける。代わりに空中へとジャンプすると、突如として橋に切れ込みが入っていく。……俺がジャンプをしていなければ、足を両断されていたような切れ込みの跡だった。
「セェッ!」
一拍の気合いとともに放たれた俺の飛び蹴りが、何もない筈の中空を捉えた。矛盾しているようだが、現実に、的外れの場所に放った筈の蹴りが当たった感触が伝わり、当たっていない筈の蹴りにPoH――いや、PoHの姿をした亡霊は吹き飛ばされていた。
「…………ッ!?」
蹴られたまま驚愕の声を喉の奥から絞り出した『亡霊』は、吹き飛ばされてゴロゴロと転がりながらバランスを取り、なんとか姿勢を整えた。俺の追撃を警戒して包丁を構え、そのポンチョの奥からは本物の《奴》に似た眼光を覗かせたが、その身体には既に数本のクナイが突き刺さっていた。……正確には《奴》の身体に突き刺さっている訳ではなく、またもや中空にその俺の放っていたクナイは炸裂していたが。
「……もう種は割れてるんだよ、偽物が」
油断なく日本刀《銀ノ月》に手をかけながら、俺は『亡霊』に向かって問いかけた。その問いかけをした数秒後、《奴》の――PoHの姿がこの世界から消えていき、代わりにその側面の何もなかった筈のから、一体の黒い服を着たレイピアを武器にした妖精が現れていた。
……いや、妖精、と言って良いものか。種族は服の色から察するに、キリトが選んだという《スプリガン》のようだが……その姿は妖精のように美しいものでは決してなく、やや高めの身長に不釣り合いな、自らの身長を越えるほどの長さの、一本ずつレイピアを持った腕が目を引く、異形の姿だったのだから。顔には覆面レスラーのような仮面が被さっており、その素顔を拝見することは出来ないが、俺から受けたクナイや蹴りのダメージからか、激しい息づかいがその仮面の裏から響いていた。
そして同時にその異形の姿故に、今までどうやって攻撃していたか得心が言った。もちろん『亡霊』だから――などという訳ではなく、仕掛けとしては単純かつ力業である。
まず、スプリガンの種族特性である幻惑魔法によって、偽物のPoHの幻影を作り出す……道理で攻撃が当たらないですり抜ける訳だ、幻影なのだから。そして自らもその魔法によって姿を隠し、PoHの幻影に合わせてその異形の腕で攻撃する。カウンターを仕掛けようとしても、本来の攻撃は違う場所から来ているのだから、そのカウンターも当然ながら空を斬る。
問題は、その戦術を可能としている異様に長い手と、
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