第百七十九話 485年の捕虜交換
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まあ良いわ、お近づきの印に此を差しあげますわ」
ヤンにテレーゼがケスラーに命じて渡したのは数枚のデーターディスクであった。
「此は?」
「卿が、以前調べていたブルース・アッシュビーに関する帝国側の記録などですわ。ジークマイスターやミヒャールゼンなどとの繋がりが丸わかりで面白いですわよ」
自宅の事はおろか、アッシュビー提督を調べていた事すら知られている事にヤンは戦慄を覚える。
「何故それを……」
「何処ぞのボンボンと違って自慢げに情報源を言うほど阿呆では無いですわよ」
「な……」
「フフフフ、妾のことが恐ろしいかしら、女は魔物ですわよ努々お気おつけなさいね、例えそれが思いを寄せるジェシカ・エドワーズだとしてもね」
「……………」
ヤンは驚きのあまり黙ってボーイが気を効かせて持ってきたグラスをあおり、ディスクを見つめるだけであった。
「そうそう、ヤン准将のお飲みになったのは、イゼルローン要塞が完成した宇宙暦767年、帝国暦458年産のガスコーニュ星系産のオール・ダージュ・アルマニャックですわよ。一本100帝国マルク(10000円)程度ですけど其方では1000ディナール(20万円)ぐらいでしょうね、どれだけフェザーン商人がぼった喰っているかが判るわね。其処で今日と言う日を記念して随員の皆にお土産として一人1ダース差しあげますわ。ああそう言えばヤン准将も458生まれで同じ年でしたわね。それならば記念に1グロスぐらいお持ち成ってくださいな」
「いやそれは」
テレーゼはヤンの答えを聞いて更に畳みかける。
「高々30年足らずでは熟成が足らないのでヤン准将の口には合わないかしらね。それならばエーリッヒ2世(止血帝)時代の260年物なら良いかしら。確か一本50000帝国マルク(500万円)だったかしら、お近づきの印にグロスで贈りますわ。キャゼルヌ准将とお分けになってくださいね。確か其方へ行けば5〜10倍はするはずですからね」
ヤンにしてもそんな高い酒をくれる事は嬉しい気持ちがあるが、それ以上にテレーゼを何か得体の知れない者との思いがぶり返し背筋に冷や汗をかき悪寒に震えるのであった。
そんなヤンの姿を見ている他の随員はテレーゼがあまりにもヤンの事を知っている事、ヤンの幼なじみがテレーゼの家臣と成っていることで、益々ユリアン・ミンツスパイ説を信じるようになってしまっていた。更にジェシカ・エドワーズの事もスパイの可能性が有ると決定された。
この件で情報部は完全にヤン・ウェンリー、ユリアン・ミンツ、ジェシカ・エドワーズ、更にジェシカ・エドワーズの恋人であるジャン・ロベール・ラップも好ましざる人物として監視対象にすることを決めたのである。
式典に付属する形で行われた宴が終わると、メインである
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