ルームアウト・メリー 前編[R-15]
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んでもらおうとして、もう一回君から電話がかかった」
肉屋に着いた時の会話だろう。咳込みながら電話に出て、途中で急激に様子がおかしくなった。好奇心を抱いたのもその時だ。
「電話に出てすぐお母さんに気付いたのね。咳込んでいたのは腐臭の所為?」
「臭いが強くなったと思って横を見たら、天井からぶら下がってた母さんと目があったんだ。これで人間なのかと疑った・・・うっ・・・げふっ、ごほっ!!」
もう一度、シンクに向かって激しく咳込んだ青年は、不快感を放出するようにもう一度胃の中身をシンクにぶちまけ、そのまま力なくずるずると床に崩れ落ちた。ずり落ちる過程で台所にあった箸やお玉、果物ナイフが床に転げ落ちた。漏らすのは嗚咽と吐瀉物と、瞳より零れ落ちる滴だけだった。
ずっとずっと、彼は何かを悔いている。一体何に、と訊こうとして、止めた。それはきっと今から彼が喋る。そんな気がした。彼も今この瞬間だけは、メリーさんの都市伝説の一部として取り込まれているのかもしれない。そんな考えが頭をよぎる。はたして、彼は予想通りに心中の吐露を再開した。
「母さんの死体は、あれは死後何日か経ってる。でも親父が死んだのは多分今日だ。死後硬直が、まだ頭の辺りにしか起きてない」
「詳しいのね。お医者さん?」
「親父は、俺を医者にしたかったのさ。自分が昔そうなれなかったから・・・・・・だから、毒なんて持ってたんだろう」
そう言って、彼は床に戦慄いた拳を叩きつけた。
「ちくしょう、何なんだよ・・・・・・あいつは結局何がしたかったんだ!何で、何で両方死んでるんだよ!!俺に言いたいことがあったんじゃなかったのか!?なのに死んだのは今日か!!俺はもう家族でないから、自分たちの事は何も伝えないって言うのか!!」
叩きつけた拳が果物ナイフに当たり、指に真赤な切れ目がいくつも入ってゆく。
曇りの無かったナイフの断面は瞬く間に皮脂と血液の混ざり合った奇妙な文様を描かれた。
それを止めようとは思わない。どうせ拳から出血した程度で人は死なない。
私の好奇心も、半分ほどは薄れていた。今回のターゲットは、とても奇妙な結末を迎えたようだ。涙を流しながら、自分が嫌いだったという両親の死を悼み、恐らく止められなかった自分を責めている。メリーさんの都市伝説とは関係のない、既にただの事件となったこの現場に留まる理由も、もうないような気がした。
「・・・母さんが死んだんならそう言えよ。自殺したいくらい悩んでるなら、連絡くらい入れても良かっただろう。それを何で死体と何日か一緒に過ごして、人が来る前に・・・見せびらかすように・・・・・・勝手だよ、親父はさ!!」
「嫌いじゃなかったの?両親の事」
「知らねえよ!!知らねえけど、悔しいんだよ・・・どうしようもなく悔しいんだよぉ・
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