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【短編集】現実だってファンタジー
ルームアウト・メリー 前編[R-15]
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味方しかしやがらない。こんな家に買い殺されるのは嫌だったんだ!!」
「貴方はお父さんとお母さんが嫌いだったのね」
「ああ、嫌いさ!習い事も友達も成績も・・・何でもかんでも一方的に道を押し付けて!だから、家の金をぶんどって勝手に出て行ってやったのさ!!」

そう叫んだ後、青年は苦しそうに口元を抑えて嗚咽を漏らし、私の横を通り過ぎて台所のシンクまで走った。取り落としたナイフが私の横すれすれに落下し、髪の毛を切りながら、とん、と小気味のいい音を立てて床に刺さった。
青年は換気扇のボタンを押し込み、蛇口をひねり、水が出るよりも先に口から吐瀉物を撒き散らす。現場の臭いか、それとも人が死んでいるという異常な状況に耐えられなくなったのだろう。歩いて彼の後ろまで移動しようと思い、面倒になって儀式を行う。彼の背後に体が投げ出された。

「私メリーさん。いま、台所にいるの」
「メリー・・・メリーさん。メリーさんの、電話・・・・・・?」
「知ってたんだ?まぁ、どうでもいいけど」
「俺を、殺すのか?」
「私は見ているだけのメリーさん。殺すメリーさんは、どこかの誰かを殺していると思うわ。私は見ているだけを望まれてるから、見てるだけ」

青年は返事を返さず、もう一度シンクに向かってむせた。
それをじっと見つめ、待つ。メリーさんは急がない。ただ淡々と、目的を果たすだけだ。蛇口から漏れる流水と彼の咳だけが、驚くほど音の無い家の中に響く。
もう、メリーさんの存在すら考えたくないほどに動揺しているらしい。親の死に目にこんな形で会えば、こうもなるのかもしれない。やがて肩で息をしながらも落ち着きを取り戻した青年が、またぽつぽつと語り始めた。

「親父が・・・・・・一度帰って話をしなきゃ、力づくで連れ戻すって言って・・・嫌だったんだ、どうしても。ここにいると俺の心は鎖で縛りあげられて、自分で動くことも出来やしない。だから、向こうにある生活を奪うくらいなら刺してやるって」
「それで、いざ家に着いたら死んでいたのね」
「おかしいと思ったんだ!」

突然、台所を拳で殴った。揺れで立てかかっていたまな板が倒れる。震える腕を2度、3度と叩きつけて、それでも抑えきれない感情を押さえつけるように自分の拳を掌で包み、目をつむる。どこか悔いているように見えた。

「電話が鳴ったんだ。君からだ。でも、親父も母さんもちっとも出やしない。人を呼んでおいて、呼び鈴を鳴らしても返事一つ返さない上に、電話にも出ない。おかしいと思って、試しに電話に出た」
「あの後に電話に出た貴方は冷静じゃなかったわ」
「リビングから酷い匂いがして、電話を持ったまま入ったら親父がソファに座ってたよ。声をかける前に床に落ちて、確認したら死んでるようだった。訳が分からなくて、とにかく母さんに救急車でも呼
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