ルームアウト・メリー 前編[R-15]
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つも勝手に!!』
彼は、メリーさんとは話していない。まるで自分に話しかけている風だった。私が家に接近している事さえちゃんと把握していないのかもしれない。錯乱しているということだ。それも、私に起因するものではなく、彼の周辺に起因するものだろう。私の起こす「電話という結果」すらしっかり把握していないと思った。
「ねえ、なにが『そんなつもりで』なの?それは、貴方の周囲で起きている事ね?」
『俺は・・・・・・なんで、あと一日早く決断しなかった!!くそっ、くそぉっ・・・!!こんなんじゃ、俺はどうして・・・・・・』
「お話だけじゃ分からないわね。私、今からそこに行くわ」
『・・・・・・えっ?』
身体が宙に投げ出される。くたびれた印象を受ける木造の一軒家が視界に映った。門構えは客観的に見て立派と言えるものだと思うが、塀の向こうにある木々に生命力が感じられない。長く世話をしていないようだ。
『ま、待ってくれ。来ちゃ駄目だ・・・今は駄目だ!!絶対に来ちゃ駄目だ!!』
「私メリーさん。いま、貴方の家の前にいるの」
『見ちゃいけない!!開けるんじゃない!!絶対に開けては駄目だ!!聞いているのかい!?』
私を怖がっている訳ではないな、と分かった。むしろ私がその場所に来るのを怖がっているようだ。それは自己防衛か、それとも私を気遣ってか。そのどちらとも付け難い強い衝動が彼を動かしている。
「聞いていないのは貴方よ。貴方、どうして私の行動に疑問を抱かなかったの?商店街から交差点まで、交差点からここまで、移動にどれくらい時間がかかるのか考えた?」
『そんなことは後でいい!!お願いだ、中には・・・・・・』
必死の声色で訴えてくる。でも、メリーさんはターゲットの言い分を聞くことはない。ただ淡々と、自分がターゲットの後ろにいるという現実を引き寄せるだけだ。手繰って手繰って、私はもうすぐ全ての束縛を乗り越えた現実に辿り着く。メリーさんになり、私の答えを知る。彼の真相を全て知る。
「私メリーさん。いま、貴方の後ろにいるの」
= = =
目の前には奇妙な光景が広がっていた。その場には3人の人間がいた。
一人は眠るように目を閉じたまま、ピクリとも動かない中年の男性。
口元から泡を吹きだし、その肌は血が通っていないかのように青白い。いや―――血が流れていないのだと私は気付いた。肺が、心臓が、横隔膜が、生命活動に必要な運動が一切起きていない。中年の男の生命活動は完全に停止していた。
テーブルに目が行く。いくつかの、用途の分からない錠剤が数種類転がっている。薬については詳しくないが、カプセル剤は自作に見えた。隣にはそこに僅かな水の溜まったコップ。薬を呑んだのが死の遠因・・・若しくは直接的な原因だろうか
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