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【短編集】現実だってファンタジー
ルームアウト・メリー 前編[R-15]
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会話を成立させる気もないのに、話しかける。言って気付いたが、これはメリーさんの本能ではなく私のロジカルな思考から導き出された疑問だった。私の意志と本能の境は曖昧だが、自意識と意志は似ているようでまったく異なるものなのかもしれない。
それはいい、興味が無い。ただ、疑問の答えには興味があった。時たま、私の意志は人間に興味を持つことがあった。そんな相手は結局死なずに終わることが多い。記憶する限り、メリーさんを始めた頃にはそんなことは起きなかった。これは私の意志の変化か、それとも集合無意識が望むメリーさんの変化か。矢張り、興味はない。

『なん・・・だい?声を聞く限り、君は子供だろう。こんな時間に知らない人に電話かけてちゃお母さんが心配す・・・・・・母さん・・・・・・』

突然彼の声のトーンが下がった。声色が含む感情は後悔か、悔恨か、恐らくはマイナスに位置するネガティブなもの。だが、構わず疑問をぶつけた。

「貴方、さっき自分の父親の家に電話がかかってきたと言ってたじゃない。でも、貴方と父親は絶縁関係だとも言ってたわ。あなた、どうしてお父さんの家にいたの?」
『・・・・・・・・・ぅああ、あ・・・!』

息が乱れるような空気音と、言葉にならない嗚咽が聞こえた。何となくだが、「お母さん」のワードを発した時から何かを思い出しているように感じた。目の前の現実がぼんやりと虚像を形作る。彼は頭を抱えていた。

『俺は・・・俺はぁぁ・・・ッ!』

喋る気が失せた。向こうが電話を切った・・・いや、拳で電話機を叩き割ったようだ。何が彼の激情を駆り立てているのかは分からない。だが、彼の激情の原因を暴きたい、という欲求が沸き起こってきた。これほど急に行動をしたく感じるのは初めてだった。ここに至って私は、今、私の意志と集合無意識の求めるものが重なっているのではないかと推測した。でなければ、これほどの意思の流れを説明できないとも思った。

私はメリーさん。メリーさんは私。互いの意志が交錯しても矛盾が起きない存在。だから、私の考えは正しいと言う確信があった。私は今、相手が何を考えているのか知りたがっている。

「私メリーさん。いま、交差点の前にいるの」

口を開いた瞬間、私は交差点前に投げ出されていた。車が行き交い、人も少なからず歩いているが、私の存在に気付いても気に留めて調べたり拾おうとはしなかった。「誰かが何とかしてくれる」という集団無意識から、誰も自分から手を付けようとはしないのだ。
私も、興味が湧かない物には思考を使わない。私は人間を理解できないことが多いが、ひょっとして人間に近い思考なのかもしれないと、何とはなしにふと思った。

『そんな・・・・・・こんなのを見たかったんじゃないだろ!俺はそんなつもりで・・・ッ!!何でなんだよ、いつもい
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