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【短編集】現実だってファンタジー
ルームアウト・メリー 前編[R-15]
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に何かしらの流れが生じてそうなったのかもしれないが、興味が無い。ただ、その青年を見つめる。見つめれば、彼がこちらを振り向くと知っているから。予想通り、彼はこちらを振り向き、少し驚いた顔をした。西洋人形など、そうむき出しで置いてあるものではないから驚くのもロジカルに理由を導き出せるだろう。

「・・・こんな所に人形?」

都市伝説も物語も「きっかけ」から始まる。そして「きっかけ」は大抵、人間の予期せぬところからだ。逆を言えば、都市伝説が人間を選んでいるとも言える。人間の意識が生み出した存在なのに、人間は選ばれる側とは皮肉が効いている。つまり、人間の無意識は赤の他人が面白おかしいストーリーで恐怖に陥れられることを望んでいる訳だ。
それは潜在的に「スリリングな死」をして欲しいと期待を抱いているのだ。もし自分と、同じメリーさんが出会ったら、私はそのメリーさんに「スリリングな死が訪れたら面白い」と考えるだろうか。その疑問に興味は湧かなかった。どうせ会うことはない、と思ったから。

男が近づき、私を覗き込む。よく見れば頬以外にも指に怪我をしていた。何の傷かは皆目見当がつかなかったが、どうでもいい。

「綺麗な金色の髪だ。眼は、碧眼って奴かな。作りはしっかりしてるし別段悪いデザインでもないのに、何で捨てられてるんだろう」
「・・・・・・・」
「古くなったか、それとも・・・邪魔に、なったのか・・・・・・」

青年は暫く考えるそぶりを見せた後、何かを思い出したように沈んだ顔をした。私は、答えない。ここで答えるのはメリーさんではないからだ。きっとやろうと思えばここで喋ることも出来るのだろうが、する気にはならなかった。人間と一緒で、実現できるとは思っていてもやらない。例えば殺人も、やろうと思えばできるが実際にやる人間は非常に少ないだろう。それと同じで返事を返さなかった。

「・・・馬鹿だな俺。そんなの気にする暇があったら・・・・・・緊張で余計なこと考えるなよ、俺」

一人で何やら呟いた青年は、手に握る鞄に一瞬だけ目を落とし、また歩き出した。自分の考えに飲まれて私の事を完全に忘れているようだ。これも別段悲しくは感じない。私の行動は―――私が決めているのではないのだから。

彼は「メリーさんの電話」の都市伝説を知らないか、そこまで思いが至っていないだろうと思った。いや、彼に限らず私が選んだ相手は皆都市伝説の事を知らないか、心のどこかで絶対的に信じていない。つまり、そんな相手をターゲットにしろと人間の無意識が望んでいるからそうなるのだろう。私は人間の願望を、論理の世界から飛躍して叶えているのだ。願望の実現、理想の顕現、思考の出現。それが私だ。

そして、しばらく時間が立って夕焼けが地平線に沈んだ時に、私は「何となく」動き出す。
まるで決められ
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