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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
25.神意の妹
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そのとき、浅葱の携帯電話が鳴り出し、そこに表示される名前に軽く目を見開いた。
「唯ちゃん、悪いけどちょっとサナちゃんのこと頼むね」
鳴る携帯電話を見せながら混み合う歩道を離れて閑散とした裏通りへと移動する。
「──もしもし、古城?」
『浅葱!? 今はどこだ?』
聞こえてきたのは切羽詰まったような古城の声だった。
「どこって……クアドラビルの前だけど。ほら、キーストーンゲートの近くの。今はちょうどパレードの本隊が通ってて」
『やっぱりそうか。小さな女の子と一緒にいるよな』
「なんであんたがそんなこと知ってるよの?」
『それは、今はいい。その子は誰だ? 知り合いか?』
早口で古城は聞いてくる。よっぽど焦っているのであろうか。
「ううん。迷子。どうしてだか知らないけど、懐かれちゃってさ」
『……迷子? 名前は?』
電話越しに古城の戸惑う声が聞こえる。
「──浅葱さん!」
答えようとする浅葱の声を遮って叫ぶ少女の声が聞こえる。思わず電話を耳から話して、背後を振り返る。
裏路地の暗がりからサナの手を引きながら走ってくる唯がいた。
「どうしたの? そんなに慌てて?」
「いいから早く逃げてください!」
切羽詰まったように唯は叫ぶ。
「逃げても無駄だ」
次に聞こえてきたのは嗄れた声だった。
唯は恐怖したように後ろを振り返る。
それにつられて浅葱も振り返り、暗闇の目を凝らす。
そこから現れたのは、老人だった。
年齢はおそらく六十歳ほど。年齢のわりに大柄で、骨ばった身体には布切れのような粗末な衣服が巻きついている。
「浅葱さん! 早くサナちゃんを連れて逃げて!」
『──浅葱、どうした?』
戸惑った古城の声が電話からきこえる。
「それが、変なお年寄りに絡まれて、唯ちゃんが逃げろって──」
サナの手を掴みながら、浅葱は一応逃げられる準備をする。
その瞬間、老人が吼えた。
「邪魔だ! 退け──」
老人の全身が赤く染まる。彼の肉体そのものが、高熱を帯びた金属のように発光を始めたのだ。
老人の背後に陽炎が立ち上る。強烈な熱気が吹きつけてくる。
超高温の炎を体内に宿し、赤熱した老人の姿は、まるで
炎の精霊
(
イフリート
)
のようだ。
「精霊遣い──!?」
老人の正体に気づいて、浅葱がうめいた。
精霊とは、高次空間に存在するエネルギー体。極めて高純度の霊力の固まりだ。
精霊は本来、この世界に呼び出されれば、一瞬で消滅してしまうものだ。それを操るには、精霊炉という巨大なものが必要だが、例外的に精霊を召喚できるのが、“精霊遣い”だ。
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