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問題
第二章
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「そうなの」
「まあ安心しろ。生きて帰って来るさ」
 こうも言ってきた。
「ええと。構成の彼女の」
「はい」
 彩名が応えた。その笑顔で。
「彩名です」
「そう彩名さん、こいつを宜しくな」
 にこりと笑って彼女に告げるのだった。
「楽しくやってくれ。悪い奴じゃないから」
「わかりました。
「それじゃあ。またな」
「帰った時は楽しみにしておいてよ」
 構成が笑って兄に声をかける。
「その時はね」
「ビールか?」
「ああ、わかったんだ」
「御前が飲むのはいつもそれだからな」
 笑っての言葉だった。
「だからな。わかるさ」
「そうか。わかったんだ」
「焼き鳥だな」
 そこに察しをやった。
「今度は。違うか?」
「わかるんだ」
「御前はいつも飲む時は肉ばかりだからな。わかるよ」
 笑ってまた言うのだった。ここでは緊張がなかった。
「それじゃあ。焼き鳥を二人でな」
「うん、二人で」
 最後にこう言葉を交えさせ船に乗り込む。家族や自衛隊に好意的な人々や軍事マニアの送りの声と市民団体の批判の声に送られて船は出港する。とりあえずはこれで話は終わりだった。
「行ったわね、お兄さん」
「ああ」
 出港し海に出て行く船を見ながら彩名の言葉に頷く。
「まあ自衛隊が行く場所は安全な場所ばかりだから大丈夫だとは思うけれど」
「そうなの」
「自衛官が死ぬのは政府も嫌なんだ」
 これには確かに人道的な意味もある。しかしだ。
「死んだらそこで叩かれるからね」
「マスコミとか市民団体にね」
「あと野党から。だからあえて安全な場所に送ってるんだよ」
「政治的ね」
「そうだよ、政治的だよ」
 船は次第に消えていくがそれを見ながらの言葉だった。
「軍隊、いや自衛隊ってそうなんだよ」
「そうなの」
「そうだよ。PKO自体が政治的な理由で決まったし」
 話はそこに向かった。
「本音としては誰も送りたくないし行きたくないんだよ。あれこれ揉めるし人送るのに教育してからお金かけて送るんだよ。それが大変なんだよ」
「そうだったの」
「外国が色々言ったりするからね。湾岸戦争で感謝されなかったし」
 九十億ドル出してそれで人を送らなかったからだ。このことがPKOを送ることの大きなはじまりになった。ところがここでまた政治的な話になるのだった。

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