第二章
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か」
「音楽ですか」
僕はそれを聞いて暫く考え込んだ。
「何がありますか」
僕はポップスが好きである。だが生憎今回の旅行には何も持って来てはいない。持って来ればよかったと思っているがそれも後の祭りであった。
「琵琶があります」
「琵琶が」
「ええ。実は私琵琶を弾くことができまして」
「それはまた」
意外なことであった。どうもこの人は案外多芸な人のようである。
「琵琶も西から伝わってきたものなのですよ」
「ほお」
それは意外だった。
「どうですか、一曲」
「お願いします」
僕は頼んだ。すると彼女は暫くしてから琵琶を鳴らしはじめた。砂の世界に流麗な曲が流れはじめる。
「ふう」
僕はそれに耳を側だてた。聴いているとそれだけでまた酒が飲みたくなった。僕はまた飲んだ。
「貴女も」
ガイドさんにも薦める。すると彼女は一旦手を止めてそれを口に入れた。あっという間に飲み干してしまった。
「どうも」
飲んでから礼を述べてくれた。そして今度は自分で入れて飲んだ。
「ワインにはこうした曲も以外と合うでしょう」
「そうですね」
確かにその通りであった。飲んで聴いてみてそれが実感できた。これは不思議なことであるように思えた。何故ならワインは欧州の飲み物だからだ。そもそも中国で飲むこと自体が最初は場違いに思えたというのに。
「それにこうした場所で」
「ええ」
耳をそばだてる。実に心地良かった。
「あっ」
また風が来た。それが頬を撫でた。
「どうですか、貴方も」
ガイドさんは琵琶を僕に薦めてきた。僕はそれを受ける気になった。
「それでは」
そしてそれを受け取った。試しに少し鳴らしてみた。
「あれっ」
僕は琵琶を鳴らしたことはない。だが今は不思議な程奏でることができた。それが不思議だった。
「上手いですね。経験があるんですか?」
「いえ」
そんな筈がない。それがどうして。僕には不思議でならなかった。琵琶が自然に鳴るようであった。
琵琶の声が砂漠に聴こえる。僕はそれを聴きながらまたワインを楽しんだ。そして異境でそれを心から楽しむのであった。
西の砂漠で 完
2005・4・29
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