第八十話 本番その九
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「走ってもらうのよ」
「本当に意地でも単位取ってもらうのね」
「それで三年で卒業してもらうのよ」
「成程ね、じゃあ私達は」
「少なくとも体育の単位は取れたわ」
景子は彩夏にこのことは絶対だと保障した。
「よかったわね」
「辛かったけれどね」
「その介はあったわね」
「ええ、そうよね」
「単位貰えたから」
それで何よりだった、何と言っても。
それで五人は明るくグラウンドを後にした、そうして着替えて教室に戻ろうと思ったところで。
後ろから五人を呼ぶ声がした、そこに五人同時に振り向くと。
体育の先生がいた、先生はこう言ってきた。
「あんた達のセーラー服だけれど」
「あっ、これですね」
「この服ですね」
「仮装の服着た娘はね」
まさに琴乃達のことである。
「後でその服をクリーニング屋さんに出しておいてね」
「校内の、ですね」
「あそこに」
「そう、出して」
そして、というのだ。
「後はクリーニング屋さんが演劇部に渡してくれるから」
「あの、お金は」
「それは」
「勿論あんた達が出すのよ」
先生はこのことはあっさりと答えた。
「使ったのならね」
「それならですね」
「当然として」
「そう、まあ千円もいかないし」
それに、と言う先生だった。
「学生割引もあるから」
「安心して、ですね」
「お金も出して」
「クリーニング屋さんは現金払いだから」
その場でだ、これがこの学園のクリーニング屋の支払いの仕方である。
「お金を持って行ってね」
「それでクリーニングしてもらう」
「絶対にですね」
「誰がどの衣装を借りたのかはもうチェックしてるからね」
演劇部が貸し出す時に誰が何を借りたのか借用書付きでチェックしているからだ、ちゃんとそうしたからである。
「持ったままだと後で言われるわよ」
「はい、じゃあ早くクリーニング屋さんに出します」
「そうします」
「それじゃあですね」
「後は」
「そう、服はいつも綺麗によ」
先生はこのことも力説してきた。
「服も洗わないと不潔だからね」
「意外と、ですよね」
「服も」
五人もこのことはよくわかっていた。それで美優が自分達のセーラー服を見ながらそのうえでこんなことを言った。
「そういえばセーラー服って」
「そう、昔は船の中にお風呂なんてなかったから」
「だからフケとかをですよね」
「服につかない為の襟よ」
セーラー服のその襟は、というのだ。
「あと。汚い話だけれど」
「さらにですか」
「海軍はインキン、水虫よ」
女の子にはどうか、というものが出て来た。
「お風呂に入らないからよ、服も洗わないから」
「それで、ですか」
「そう海軍さんはインキンが多かったのよ」
それに水虫だ。
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