第八十話 本番その七
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「それは止めてな」
「里香ちゃんがゴールしたら」
「その時にな」
どうするかと言うのだった。
「迎えような」
「そうね、じゃあね」
「タオルもあるし」
勿論使っていない新しいタオルだ、それをだ。
美優はその手に出してだ、そのうえで言った。
「これもプレゼントして」
「あとお茶もね」
景子はこちらを出してきた、ペットボトルのそれを。
「これもね」
「飲みものもな」
「里香ちゃんがゴールしたらあげよう」
「そうしような」
こう話してだ、そしてだった。
四人はその里香をゴールで待った、すると。
里香も四人に気付いた、そうして。
笑顔になりだ、最後の力を込めてだ。それからだった。
ラストスパートに入った、全力で走りゴールに向かう。そうしてだった。
里香もゴールした、そのゴールした彼女を。
四人はすぐに囲んでだ、それぞれタオルとお茶を差し出して言った。
「お疲れ様」
「完走おめでとう」
「うん、何とかね」
ふらふらになりながらもだ、里香は応えた。
「完走出来たわ」
「里香ちゃんやったわね」
「部活では走られたけれど」
それでもだというのだ。
「それでもね」
「不安だったのね」
「完走出来るかどうか」
「ええ、けれどね」
それでもだというのだ、ほっとしている顔で。完走して体力も気力も尽きているがそれでもその顔はそうなっている。
「出来たわ、完走」
「それじゃあね」
ここでだ、景子がだ。
その持っているタオルをあらためて差し出してだ、里香に言った。
「これ」
「お茶ね」
「水分補給して」
今は、というのだ。
「これでね」
「くれるの?」
「ええ、飲んで」
「それ部活の完走記念でね」
彩夏がそのお茶について話した。
「それで皆にね」
「配ってくれているお茶なの」
「そう、だから遠慮なくて」
そうして、というのだ。
「飲んでね」
「有り難う、それじゃあね」
里香はそのお茶を受け取った、そしてだった。
そのお茶をキャップを開けて飲む、そうしてやっと一息ついた。その彼女に美優もまたあらためて声をかけた。
「これもな」
「タオルね」
「ああ、汗拭いてな」
そうしてというのだ。
「すっきりしなよ」
「このタオル美優ちゃんのよね」
「そうだよ、実は一枚余計に持ってきちゃってさ」
それで、とだ。美優は里香に優しい笑顔で言った。
「使ってくれよ」
「じゃあ洗って返すわね」
「そこまで気を使わなくていいよ」
「いや、そういう訳にはいかないから」
「そうか、まあとにかくな」
「汗拭いてよね」
「ああ、風邪ひくからさ」
汗で身体が冷えてだ、今は身体が走った後で熱いがそれが急に冷えると普段より風邪をひきやすい
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