第一章
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彼女は中国のワインについて話をはじめた。
「唐代にはもう飲まれていましたし」
「そうなのですか」
「ほら。さっき桂花陳酒のお話をしましたね」
「ええ」
「あれは楊貴妃が好きでして。よく飲んでいたそうですよ」
「へえ、楊貴妃が」
「はい。まあ最近までポピュラーではなかったのは事実ですけれどね」
「けれど最近は中国でもワインを生産していますよね」
「それを今から味わって欲しいのです。宜しいですか?」
「喜んで」
そこで羊料理とワインが運ばれてきた。丁度麺と水餃子を食べたばかりなのでいいタイミングだった。
羊料理は野菜と一緒に煮たものであった。肉がかなり大きかった。
「緑の野菜ですね」
「ええ。苦手ですか?」
「いえ、野菜も好きなので」
そう答えてまずは野菜を食べる。青梗菜のようだ。
「これも美味しいですね」
「それでは羊を」
「はい」
言われるまま羊を食べる。柔らかくその旨味が口の中全体に広がった。
「これはまた」
「どうですか。北京の羊はいいでしょう」
「はい」
本心からそう答えた。彼女はそれを見てにこりと微笑んだ。
「私は上海人ですけれど」
「はい」
「それでも北京の羊料理は好きなんです」
「そうなのですか」
「美味しいものはね。どの国のものでも美味しいでしょ?」
「はい」
その通りである。同意した。
「美味しいですね、確かに」
「ワインもいいですよ」
見ればグラスにもう注がれていた。赤い宝石がそこにたたえられていた。
「それでは」
彼女はそう言いながらワインを手に持った。
「女の私が音頭をとるのはどうかと思いますが」
「いえ」
僕もそれに合わせた。ワインを手に持った。そして杯を打ち合わせた。
そして飲む。口の中にワインの香りと味が漂う。
「どうですか?」
「ううん」
飲み暫く経ってから答えた。
「いいですね。もっと癖のあるものかと思いましたが」
「美味しいでしょ、中国のワインも」
「ええ」
素直にそう答えた。
「美味しいですね。すっきりしていて」
「けれど北京で飲むよりもっといい場所があるのです」
彼女は誘うようにしてそう言った。
「いい場所とは?」
「これから私達が行く場所です」
そしてそう答えた。
「西安へ。行かれるのですよね」
「ええ、勿論」
それに答えた。
「その為にここへ来たのですから。中国に」
「わかりました」
それを聞いて頷いてくれた。
「それでは明日向かいましょう。けれど今日は」
「はい。心おきなく飲みましょう」
「そういうことです」
こうして僕達はその店で心おきなくワインを堪能した。そしてそれからホテルに戻った。一晩寝た後空港に向かった。そして西安に向かった。
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