第一章
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ればわりかし豪華な外見のレストランである。中に入っても赤い色で彩られている。これは神戸や長崎で見る店と同じである。
「赤が多いですね」
「元々中国では縁起のいい色ですからね」
ガイドさんはそう教えてくれた。
「こうしたお店にはよく使われるのですよ」
「そうなのですか」
「ええ。日本ではわりかし大人しい色が使われますよね」
「はい」
実際日本の蕎麦屋等はそうである。落ち着いていい。
「それは逆ですね。私はこっちの方がいいです」
「そうしたものですか」
「お酒も美味しいですしね」
そこでそう言って笑ってきた。
「飲みますか?ここは美味しいお酒がありますよ」
「お酒ですか」
それを聞いて考え込んだ。実は僕はこの時まだ二十歳ではなかったのである。
「どうしましょうか」
「飲めますよね」
だが彼女はそれを知らない。僕にそう声をかけてきた。
「ええ、まあ」
断る暇もなかった。僕はそれに応えた。
「ビール位なら」
「ビールですか」
彼女はそれを聞いて少し残念そうだった。
「あれはお酒には入らないと思いますよ」
「そうなのですか」
「少なくとも私にとっては」
「御客様」
ここでウェイターが声をかけてきた。中国語なのでは何と言っているのか詳しいことはわからない。
「はい」
ガイドさんが応対をしてくれた。中国語でやりとりが行われる。どうも二人の発音が違う気がする。上海語と北京語の違いだろうか。だがそれでも言葉は通じているようであった。
「お待たせしました」
ガイドさんは話を終えると僕に声をかけてきた。
「それではこちらに」
「はい」
ウェイターさんに案内されて店の中を進む。赤い店の中でガイドさんの青い服が目につく。見ればわりかし地味なスーツだ。スカートの丈の長めだ。だがそれがやけに似合っていた。逆に僕の黒っぽい服が場違いにも思えた。赤と黒は合うと思っていたが常にそうだとは限らないようだった。それともこの黒が悪いのだろうかと思った。
(どうなのかな)
僕は自分の服を見た。見れば完全な黒ではない。茶色も混ざっている。厳密には黒に近いダークブラウンである。どうもこれがいけないらしい。原色には原色が合うということか。見れば彼女の服は原色である。そこに秘密があるらしい。
「着きましたよ」
そこで彼女の声がした。
「こちらです」
「あ、はい」
それに気付いて彼女に顔を向ける。もう僕に席を勧めていた。
「では御言葉に甘えまして」
「どうぞ」
僕は席に着いた。彼女はその向かい側に座った。丁度対面する形となった。
「それでさっきのお話の続きですけれど」
「お酒でしたよね」
「はい」
彼女は頷いた。
「私は強いお酒が好きなんですよ」
「強いお酒ですか」
そう言
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