第二章
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第二章
「あのお花も奇麗だなあ」
プラシドはただそのお花を見ています。
「何ていうのかな。見たことないけれど」
ずっとそのお花を見ていました。人間達の話は聞いていません。そのまま連れて行かれてもやっぱりお花のことばかり考えているのでした。
「本当に奇麗だなあ」
自分の首に縄をかけている人の胸を見たこともない道を歩きながら。その胸にあるその黄色いお花をずっと見ているのでした。
「お花って色々あるんだな。本当に」
「それで闘牛の試合は何時かな」
「三日後らしいな」
彼を連れて行っている人達は道を歩きながらこう話しています。
「三日後な」
「何だ、すぐなんだな」
「丁度いいだろ」
こんな話をしています。
「早速買った闘牛を出せるんだからな」
「そうだな。じゃあそれまでの間は」
「餌は奮発するぞ」
「それで力をつけさせるんだな」
「そういうことだ」
プラシドをよそにプラシドのことを話しています。
「それでぶつけるからな」
「よし。そうするか」
こんな話をしてプラシドを闘牛の舎に入れました。プラシドはそこでも片隅に咲いていたお花を見つけてずっと見続けるばかりです。気の荒い素振りは全くありません。
「あれっ、この牛って」
「闘牛だよな」
闘牛の舎の係りの人達は挑発しても暴れようとはせずただじっとしゃがみ込んでお花ばかり見ているプラシドを見て首を傾げさせました。
「それで何でこんなに動かないんだ?」
「しかも何しても怒らないし」
「おかしな牛だな」
彼等は気の荒い牛ばかり見てきたので首を傾げさせます。闘牛になるからにはそうした牛ばかりというのは当然のことですから。
「それで何でなんだ?本当に」
「おかしな牛だよ」
けれどプラシドは彼等が何を言ってもずっとお花ばかりを見て優しい目をしています。そうして三日後。華やかな闘牛の場に連れて来られたプラシドは満員の観客席を見て自分がどうしてここにいるのかと思いました。
「何か人が一杯いるけれど」
こう思うのでした。
「ここは一体何かな」
「さあやれ!」
「見せるんだ!」
その人達は皆こう叫んでいます。その大声も彼が牧場で聞いたことのないようなものでした。
「牛を倒すんだ!」
「マタドール、御前の腕の見せどころだぞ!」
「倒すってどういうこと?」
これはプラシドが全然知らない言葉でした。
「倒すって」
「いいか!そのでかい牛を倒すんだ!」
「格好よくな!」
「牛って僕のことかな」
そのことだけはわかったプラシドでした。
「何をするんだろう。本当に」
何もかもが全くわかっていませんでした。そのプラシドは競技がはじまっても動くことはありません。目の前にマントがたなびいてもやはり動かないのでした。
そも
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