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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
??.----・error:『Nyarlathotep』
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ラノの声は――――黄金の少女。燃え立つ燐光を放つような黄金の髪に、暗黒物質(ダークマター)を溶かしたような漆黒のドレスを纏う、薄紅色の星虹(ネビュラ)の瞳。

「驚いたよ、ここまで来たのは君くらいだ。他の皆みたく、外で震えてればそれで良かったのにさ」

 落胆に、諦観に満ちるソプラノの声は――――純銀の少女。凍てつく燐光を放つような純銀の髪に、鏡像物質(ミラーマター)を溶かしたような純白のドレスを纏う、薄蒼色の星虹(ネビュラ)の瞳。

「ねえ、お願い。わたし、貴方のお話を聞きたいわ。お外のお話を、良いでしょう?」

 人懐こく、満面の笑顔で『右手』を取る黄金の少女。その温かい右掌は、まるで日輪。
 連想したのは、好奇心旺盛な仔犬か。尻尾が有れば振っているだろうと、容易に想像できる。見た目よりも幼く見えるそんな仕草に、知らず口許が綻ぶ。

「ねえ、お願い。早く帰ってよ。ワタシ、君になんて何の用もないんだ。何も、何も」

 突き放す、仏頂面にて『右手』を押してくる純銀の少女。その冷たい右掌は、まるで月輪。
 連想したのは、警戒心剥き出しの仔猫か。尻尾が有れば逆立てているだろうと、容易に想像できる。見た目よりも確りしたそんな仕草に、知らず口許が綻ぶ。

「ああ、そうか……」

 覚えがある。この感覚には、覚えがある。そう、この感覚は――――

「あの、悪夢(ゆめ)か」

 そう、夢だ。あの、悪意に満ちた混沌の玉座と同じ。痴れ狂う天上(そら)の神々、痴れ狂う地下(ほし)の神々。その讃えるモノと同じ、狂気の戸口の内と外。
 這いずるように、この肩に手を置いた――――あの『代行者』と同じ。

――夢だって判ったから、こういう風に改変したのか? 全く、俺も大概だな……。

 呆れながら、しかし悪い気はしないので、楽しみながら。少女達を見やる。

「ゆめ? 夢って、何の夢? 貴方も、夢を見るの?」
「ゆめ? あぁ、夢だね。君がそれでいいのなら、さ」

 興味深げに、興味なさげに。二人の少女はそれぞれ引き、押す。相反する二つは、しかし拮抗し、最終的に『何も』為さない。
 そんな在り方に、何故だろうか。憐れみとは違う、愛しさとも違う。まるで――――まるで、恐れにも似た感情が胸を占めて。

『駄目だ、このままじゃ。どちらかの手を、()()選ばないと――――』

 思い至ったのは、そんな事。まるで、誰かにそう囁かれたように。己の、耳許で忍び笑う『影』にも気付かずに。
 そして、その掌は……速やかに。焦燥にも似た強迫観念で迫った、『彼』の意志を体現する。耳許で嘲る、『影』の声なき哄笑を浴びながら。

「――――まあまあ。先ずは、自己紹介からかな。俺は……」

 にこりと、いつ
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