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戦国異伝
第百六十九話 三方ヶ原の戦いその十
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 知恵者である彼ならというのだ。
「これは通じる」
「左様ですか」
「しかしこれが上杉謙信なら」
 まさに恐ろしいまでの直感で動く謙信ならどうか、家康はこのこともわかっていた。
「こうはいかぬ」
「あの御仁にはですな」
「うむ、空城の計を見抜きな」
 そのうえでだというのだ。
「城に雪崩込んでくるわ」
「そこが武田と上杉の違いですか」
「上杉謙信はまた別じゃ」
 軍神とまで言われているこの者はというのだ。
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