トワノクウ
第二十八夜 赤い海(四)
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い詰めると分かって俺はあの人から離れられなかった。ただ、俺自身のために」
「潤、君……?」
「ごめん、俺、篠ノ女のせっかくの仮説、信じてやれない。やっぱり、悪いのは全部俺なんだ」
潤が自分を責める訳が分からない。銀朱は自分自身の妖を憎む心から逃げられずに死んだのに。銀朱の闇は、銀朱自身が呪いの痛みと不遇に負けたから増幅されたのに。
「銀朱さんのことは全部自分のせいだと思っているの? 支えになれなかったとか気づいていたのにとか、そんな理由で?」
潤は答えない。無言は肯定だった。
「だから、だったの」
同時にくうは、潤が元は友人であるくうを傷つけることができた理由も心得た。
「私を平気で傷つけてみせることで、潤君は銀朱さんに取り入ってたのね。信頼させてさせてさせまくって、銀朱さんの隙間を埋めるために」
信義を示すために銀朱の目の前で妖を狩る。銀朱の前に例外は認められない。
――銀朱は他人にも己と同じものを憎んでほしかった。
妖を殺す人間は味方、殺さない人間は敵。
潤は、自分はあなたの味方だ、と主張することで銀朱を孤立させまいとしていた。妖なら誰でも殺せる、例え同じ彼岸人で友達だった女の子でも殺せる、と態度で示して銀朱を安心させようとした。
――ああ、それは、気持ち悪いほど身勝手な親切だ。
「――ばかね。本当に銀朱さんの心を照らしたかったなら、少なくともそれは妖の血に濡れた刃を提げたまますべきじゃなかったのよ」
「他に俺に何ができた……新参者の俺があの人を救いたいと思ったら……真朱様みたいにゆっくり時間をかけてなんてやってらんなかったんだよ」
なぜ成果を焦った。潤ほどの剣技とコミュニケーション力があれば、わざわざ銀朱に劇的な救いを与えずとも坂守神社に置いてもらえただろうに。
くうの問いは、重ねる前に肉柱が倒れてきて遮られた。
くうは潤を抱え、翼を広げてその場を逃れる。
接地するや潤は糸をなくした傀儡のように動かなくなる。
ふいに、くうの右手から潤の右手が離れた。
「ごめんな」
今まで、と続きはしなかった。潤は今しがたした何かしらの行為によって謝罪している。何に?
潤は立ち上がって駆け出した。どこへ行くというのか。潤は天座にも目もくれずに走っていく。
くうは追いかけた。
「総員に告ぐ!!」
潤が境内に立ち、巫女たちに号令を発しているところだった。
びりびりと鼓膜を震わす声。懐かしささえ感じる。楽研のライブで彼がボーカルになった時にこんな声を聴いた。
「今すぐ坂守神社を離脱! 通行証がある者は陰陽寮に保護を求めろ! ないなら自分の足で行ける限り遠くへ! ふり返るな! 生き残ることだけ考えろ! こ
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