トワノクウ
第二十八夜 赤い海(三)
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くうは考える。材料は――彼女からすれば――山ほどあった。
(銀朱さんは不治の呪いのせいで、健常者と同じ生活はできない。何度か外で会いはしたけど、その時だって妖退治を主導していたのは潤君だった。銀朱さんは輿から見てただけ。初めて来た日だって、一番に迎撃したのは潤君だった。それらが全部、本当は銀朱さんの役目だったとしたら?)
「黙れ!!!!」
銀朱が怒鳴った。
「〈銀朱〉は私だ。私が〈銀朱〉なんだ! 妖の天敵、人々の守りの盾。それが私だ。私なんだ……!」
いっそ哀れなまでに主張する銀朱にお構いなしに、耳障りな電子音は最後の宣告を、下す。
『お前は〈銀朱〉にあらず』
銀朱はまるで胸を打ち抜かれたように押さえ、その場に膝を突いた。目の焦点は外れている。間近にくうたちがいるのに。
そして、次に起きたことに、くうは悲鳴を上げそうになった。
出て来たのは、ピンクのぶよぶよした塊が極限まで肥大化した、肉塊だった。ちょうど剥き出しの銀朱の右反面と同じ、皮を剥いだ下にある、肉。
肉塊の雪崩は、銀朱のちょうど上。
「ぎ……っ」
ず……どおおおおん!!
肉塊は、銀朱を巻き込んで、倒れた。
肉塊の下から円状に広がってゆく、血だまり。
たった一本だけはみ出した腕の五指は、まるで白い曼珠沙華。
使命ではなく憎悪から妖を排斥し続けた29代目〈銀朱〉の、まさに非業の死に様であった。
Continue…
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