暁 〜小説投稿サイト〜
トワノクウ
トワノクウ
第二十八夜 赤い海(三)
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


 くうは考える。材料は――彼女からすれば――山ほどあった。

(銀朱さんは不治の呪いのせいで、健常者と同じ生活はできない。何度か外で会いはしたけど、その時だって妖退治を主導していたのは潤君だった。銀朱さんは輿から見てただけ。初めて来た日だって、一番に迎撃したのは潤君だった。それらが全部、()()()()()()()()()()()()()()()()()?)


「黙れ!!!!」

 銀朱が怒鳴った。

「〈銀朱〉は私だ。私が〈銀朱〉なんだ! 妖の天敵、人々の守りの盾。それが私だ。私なんだ……!」

 いっそ哀れなまでに主張する銀朱にお構いなしに、耳障りな電子音は最後の宣告を、下す。

『お前は〈銀朱〉にあらず』

 銀朱はまるで胸を打ち抜かれたように押さえ、その場に膝を突いた。目の焦点は外れている。間近にくうたちがいるのに。

 そして、次に起きたことに、くうは悲鳴を上げそうになった。

 出て来たのは、ピンクのぶよぶよした塊が極限まで肥大化した、肉塊だった。ちょうど剥き出しの銀朱の右反面と同じ、皮を剥いだ下にある、肉。

 肉塊の雪崩は、銀朱のちょうど上。

「ぎ……っ」


 ず……どおおおおん!!


 肉塊は、銀朱を巻き込んで、倒れた。
 肉塊の下から円状に広がってゆく、血だまり。
 たった一本だけはみ出した腕の五指は、まるで白い曼珠沙華。
 使命ではなく憎悪から妖を排斥し続けた29代目〈銀朱〉の、まさに非業の死に様であった。



 Continue…
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ