喜ぶべきか、悲しむべきか
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更には話を聞きたがった人間によって、昼食まで誘われて断るのにも苦労した。
解放されるまでに時間がかかり、昼食休憩は後二十分しか残っておらず、窓際の席に座ってシノブはいそいそとお弁当を広げた。
大きなおにぎりと魔法瓶に入った味噌汁だ。
古くは地球の時代には、当然のように作られていた食事。
今では米はあるものの、現在では味噌はあまり一般的ではない。
この味噌も彼女の家が代々伝えてきたものであって、彼女はこの味が大好きだった。
もっとも現代人の味覚にはあまりあわないようだ。カリーナには頼まれてあげたこともあったが、口に合わなかったらしく渋い顔をされたのは記憶に新しい。
美味しいのになぁ。
そう思いながら、味噌汁を器に入れていく。
心を落ち着かせる香りと共に考えるのは昨日の一件だ。
正直、シノブは昨日までカプチェランカをよく知らなかった。
確かに装甲車が敵の手によって乗っ取られ、そのためにアレスが仕事をしているというのは知っている。
だが、その戦場がどんなところであったのか。
装甲車が乗っ取られるということがどんな事であるのか。
想像もつかない別次元の話だ。
だから、昨日の件の後に自宅で調べて、驚かされた。
七月に発生したカプチェランカでの防衛戦。
数十名以上の戦死者を数える激戦であり、おまけに同盟軍は敵の手によって装甲車が十数台ほどしか使えない状況。
まさしく全滅してもおかしくない戦い。
しかし、それを見事に防いだ戦いはネット上では奇跡とまでもてはやされていた。
配属されて一年目で消耗品の管理やお茶くみなど雑用しかしていなかったシノブには理解すらもできない。
そんな前線で英雄視されながらも、後方に送られて腐ることもなく仕事を進めている。
凄いなと単純に思う。
まだ一年も同盟軍にいないが、多くの軍人の中でも別格だろう。
カリーナやレイラが熱をあげる理由もわかる。
少なくとも一緒になれば食いっぱぐれはないから。
もっともシノブにとっては関係のない世界で、アルミホイルから取り出した小振りのおにぎりを手にした。
はむ。
一口齧って顔をほころばす。
中に入れた鮭の塩味がいい感じ。
上手くできたと満足げにもぐもぐと咀嚼して、味噌汁に手を伸ばした。
そこに。
「味噌汁?」
背後から突然かかった声に、シノブは喉を詰まらせた。
「ん、ぐ、ぐ」
「ああ。ごめん」
謝罪の声を背後にしながら、慌てて味噌汁をすする。
熱かった。
「あつっ」
慌てて火傷した唇に、お茶を注ぎこんだ。
ようやく落ち着いて、背後を見れば、申し訳なさそうな金髪の青年がいる。
アレス・マクワイルド。
今まで仕事をしていたの
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