喜ぶべきか、悲しむべきか
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、計画に変更はないから安心して動くなといったのだろう。焦って下手に動かれれば、ぼろが出るかもしれないからな」
「そして、見事に動きませんでしたね」
呟いたアレスの言葉に、セレブレッゼは笑って良いか迷った。
アレスの言葉通りに、こちらは味方の無能に助けられた。
おそらくは本気になったであろうアースは少しでも時間を稼ごうとした。
昨日の一件も、おそらくはわずかな時間稼ぎを目的とした工作。
成功すればよし。
失敗しても、誘いを断ったアレスが少しでも立場を悪くすれば交渉の材料となる。
結局幾筋も打てる手の一つ。
本命はセレブレッゼが手に入れた評議員への働きかけだろう。
だが、それも。
「形だけでも動けばいいものを。味方の無能を喜んでいいか、悲しんでいいのか」
悲痛な言葉を、缶コーヒーと共に飲みこんで、セレブレッゼは首を振った。
気持ちはわかると、アレスも同意を浮かべて、缶コーヒーを口にした。
まさにセレブレッゼの言葉通りの心情に、二人は息を吐いた。
やがて悩んでいても仕方ないと、アレスが首を振った。
「この件は終わりですね」
「既に整備計画課については、憲兵隊を動かした。当然、その情報をアースは察知しているだろうな」
「繋がりが判明されれば、車両の改修よりも遥かに高い代償を負うでしょうからね。昨日のような遊びではなく、アースは本気できますよ」
「その忠告は私も理解している。だが、それは装備企画課の仕事ではないな。憲兵と、そして陸上部隊の仕事だ」
ご苦労だったとまとめるように呟いた言葉に、アレスは小さく頷いた。
セレブレッゼの言葉通り、この件については既にアレスの手を離れている。
次の会議で時間を稼ごうとし、それをさせないために作った資料は使われる事なく終わるだろう。
それで終わればいいのだが。
+ + +
シノブ・ミツイシの昼食はいつも一人だ。
一人お手製のお弁当を持ってきており、他の者たちと違って食堂に食べに行くことはない。当初は食堂で一緒にと誘われたが、シノブの持っているお弁当を物珍しそうに見られて、いつか一人で食べるようになった。
今日は疲れた。
昨日の一件は装備企画課のみならず他部署でも有名になっている。
体格の良い軍人相手に一歩も引かず、さらには頭まで下げさせる。
元より後方勤務を馬鹿にする前線の軍人には良い印象があるわけもなく、それに対して頭を下げさせたという事実に、多くが話を聞きたがった。その当事者となったカリーナとレイラは忙しく話を続け、今日の仕事の半分以上はおしゃべりだったような気がする。
シノブはそこまで話し好きではない事もあって、入れ替わり立ち替わりやってくる人達に辟易したものであるが。
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