喜ぶべきか、悲しむべきか
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元に怒鳴りこんできたほどだ。
もっとも後方勤務においてセレブレッゼに口で勝てるものなどおらず、帰る時には勢いを失い、不満顔を浮かべるのが精一杯であったのだが。
大きく流れを変えようとしている。
だからこそ、批判や苦情などは、当然のこと。
だが。
「まったく、妙な事に――整備計画課だけは沈黙を貫いている」
呟いた言葉に、アレスは目を開いた。
そして、呟かれる言葉は実に端的で、簡単な一言。
「馬鹿ですか?」
+ + +
オブラートに包む事も忘れた言葉に、セレブレッゼは苦笑混じりに笑った。
「権限がないからとこちらも油断していたが。アース社の方もそこまで馬鹿だと思わなかっただろうな」
「今回改修することなれば、一番関係があるでしょうに」
「これからの装甲車の整備計画を一からやり直すくらいにな」
「一貫しているといえば、一貫しているのでしょうが」
そう無駄な仕事をしないという事においては。
頭を抱えるアレスから話題を変えるように、セレブレッゼは髭を撫でた。
「この後にアースはどのような手を打ってくると思っていたかね」
「それは。時間稼ぎでしょうね」
そう呟いてコーヒーを飲む様子に、セレブレッゼは満足そうに頷いた。
例え四月まで改修計画を伸ばしたところで、普通ならば問題に気付かない。
中断すれば四月以降に再開させればいいと思うだけで、何も理解しないだろう。
それが卒業して一年未満の、さらに後方勤務で数カ月しか経験していない若者が理解している。
そして、それこそがアース社の狙いであり、予算課が飛び込んできた理由だった。
「来年度予算案の決定は来月からですね」
「ああ。そして、同盟軍の予算には装甲車の改修費用も計上している。もし確定すれば、一度は獲得した金を返すことを上は渋るだろうな」
セレブレッゼは苦笑する。
予算課としては獲得して、余ればその分の予算を他に回せると思っていたのだろう。
だが、一度でもアースに金を支払う前例を作ってはならないと跳ねのけた。
「上にとっては金をかけて改修するか、アースに金を出させて改修するか。どちらにしても結果は変わらないですからね。こちらとしてはそれまでにアースに責任を認めさせなければならなかった」
「こちらが急ぐ理由だな。実際にアース社の方はこちらの説得を諦めて、評議会議員に働きかけを強めている。少しでも予算を早く成立させようとしてな」
「アース社も無能ばかりではないか」
「無能ばかりならば、工作機や装甲車のシェアでトップにはならんよ。もっとも――」
「今回は同盟の無能に足をすくわれたようですが」
苦笑ともとれる皮肉げな笑いを口元にして、アレスは首を振った。
「おそらくはアースは整備計画課に
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