第百七十八話 捕虜交換調印式
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
テレーゼが皆を見渡し、話しはじめる。
「皆の者、この度は御苦労であった。こうして多くの臣民が無事帰国出来る事になり、この様な配慮をして頂いた卿らに感謝する」
皇女自らが叛徒に礼をすることに同盟は元より帝国側でも驚きを持って感じられたが、同盟側は皇女が偽物ではないかという疑惑を抱き、帝国側では門閥貴族は“叛徒共に礼を言うなど何を考えているのか”との憤りが、下級貴族や平民は“殿下が真に帰還兵のことを考えている”と感動していた。
テレーゼは挨拶の後、エッシェンバッハ、ケスラーを引き連れ、同盟側首脳と話しはじめる。
最初はバーナード副議長であった。
「テレーゼ殿下、この度の拉致被害者帰国、ありがとうございます」
人物の出来ているバーナードはテレーゼに確りとした挨拶で礼を述べる。
「副議長、お気になさらずに、彼等も道を違えたとは言え元々は臣民ですから、臣民を助けるは皇族の義務ですわ」
テレーゼの同盟人も臣民の内、発言に眉を潜ませる面々だがそれに気づいていながら無視して続いてロボス元帥と話しはじめる。
「ラザール・ロボスと申します」
小娘に負けるかと元帥の精一杯の威厳を出して威圧するが、テレーゼは何処吹く風と普通に対処する。
「お初にお目にかかりますわロボス元帥、所で元帥の御母上は帝国出身だとお聞きしましたけど?」
その様な話が出てくるとは思っていなかったロボスが躊躇する。
「はい」
「残念ですわ。元帥が帝国に生まれていれば、今頃は統帥本部長に推挙していましたのに、其方では上が支えて上がる事が出来ないのですから。いっその事このまま帝国へいらっしゃいませんか?」
いきなりのテレーゼの話しに目を白黒させるロボス。回りからの視線に我を戻して答える。
「殿下、小官は自由惑星同盟の市民としての誇りを持っております。その様な件は冗談でもお止め頂きたい」
キッパリとした拒絶に気分を害することなくテレーゼはにこやかに応対する。
「そうですわね。それでこそ軍人と言うものですわね」
そう言うと、続いてグリーンヒル総参謀長に話しかける。
「お初にお目にかかりますわ、グリーンヒル大将ですわね」
「ドワイト・グリーンヒルと申します」
「グリーンヒル総参謀長とアーサー・リンチ提督は旧知の仲とお聞きしましたが?」
今回の捕虜交換でも帰還してこない後輩の名前を思わぬ所で聞いたグリーンヒルは驚いた表情をする。
「殿下、リンチ提督をご存じなのですか?」
「ええ、リンチ提督は、現在の我が所領のローエングラム星系で捕虜収容所の自治委員長をしていますわ。実は今回の捕虜交換でリンチ提督も帰国して貰う予定だったのですけど“自分が自治委員長で有る以上は全ての捕虜が帰国するまで帰る訳には行かない”と仰って、敢えて残ったのです」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ