その19
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い、一杯振り回して怒らせれば良かった。
独りになんて、しなければ良かったです。
だから、サスケに問われる前に捲くし立てました。
「はいこれ」
ずい、と重箱をサスケに押し付けます。
ぼんやりしていたサスケは、怪訝な表情で押し付けられた重箱を眺めました。
「何だ、これ?」
「だって、ミコトさん家はケーキじゃないんでしょう?」
「は?」
サスケらしくもなく、察しの悪いサスケにほくそ笑みながら、今日一日中ずっと言いたかった事をサスケに言いました。
「誕生日おめでとう、サスケ!」
その途端、限界まで目を開いて私をじっと凝視してくるサスケに、何か居心地の悪さを感じます。
それに何だか照れくさい。
だって、誰かの為だけに自分からこんな事するなんて、私、生まれて初めてです。
凄く恥ずかしくって、とっても照れくさい。
何か、落ち着きません。
気を紛らわす為にも全部全部捲くし立てます。
「遅くなってごめんね!僕、ミコトさん家はケーキじゃないって忘れててさ。慌てて作ったから美味しくないかも!それとコレ」
何故か無言を貫くサスケに、ミコトさんが私に書いてくれたレシピをサスケに差し出しました。
「……これは?」
月明かりの中、サスケはメモの切れ端を矯めつ眇めつし始めました。
「ミコトさんが書いてくれたレシピ」
私がそう言うと、サスケはピタリと動きを止めた。
「僕もう覚えちゃったし、サスケにあげるよ!それだけ。じゃあね!」
それだけ言い捨てて逃げ帰ろうとした時でした。
「待て!」
間髪入れずにきつい制止の声をかけられ、私はびくりとしました。
出来れば、このままサスケの前から立ち去りたかったのですけれど。
「何?サスケ」
何でも無い風を装いながら、サスケに向き直って問い掛ければ。
サスケは非常に不本意そうに眉を寄せて私を睨み付けて来ました。
「てめえ、味も保証できないモンを、オレ独りで食えってのか!?ふざけんな!重箱一杯作りやがった責任とって、お前もこれ食え!このウスラトンカチ!」
いつものサスケらしく罵倒されてちょっと面食らいましたが、それでもサスケが言いたい事は伝わりました。
そして、どうやら喜んで貰えたみたいです。
良かった。
じわじわと嬉しさが込み上げて、それにつられてにんまりと笑みが込み上げて来る。
「うん。分かった」
笑顔で素直に頷けば、照れたようにサスケが顎をしゃくりました。
「だったら着いて来い。茶位、居れてやる」
思わぬ言葉に再度びっくりです。
サスケが独り暮らしするようになってから、私はサスケのお家に招かれた事などありません。
私も、お祖父ちゃんやミコトさんから貰ったぬ
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