その19
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いけど。
でもせめて。
戻した小豆をザルにあけて水を切る。
土鍋に入れて、水を入れて弱火にかけた。
そうすると、さっき、アカデミーの教室でサスケに誕生日のケーキを差し出した子の行動と、ミコトさんの言葉が脳裏に甦ります。
家は、誕生日はケーキじゃなくておはぎなのよ、と笑っていたミコトさん。
そして、目を輝かせて頬を染めて嬉しそうにしていたサスケ君。
その光景は、ちょっと羨ましくて、胸が痛くて。
でも、とってもくすぐったくて、胸の中が熱くなって、そんな表情ができる二人に憧れました。
あんな気持ちは、うちはの人達と付き合うまで知りませんでした。
それに、ミコトさんは何でも無い風に私に約束してくれました。
私の誕生日にも、ミコトさんがおはぎを作ってくれると。
お母さんにも作ってあげたんだ、と笑って教えてくれました。
でも、ミコトさんの約束は果たして貰えませんでした。
これからも、果たして貰える事はありません。
胸が痛くて、苦しくて、何故か、独りで居るのが辛いです。
独りは慣れて居るのに。
だから。
煮上がった小豆を火から下ろして水に晒す。
上澄みを捨てて、お水を変えてもう一度。
最後にもう一回。
そしたら盥にザルを載せて、さらしを敷いて、小豆の水気を切る。
きっと、サスケはもっと辛い。
だって、独りに慣れてる私がこんなに辛いんだ。
ずっと、ミコトさん達と一緒に居て、ミコトさん達との思い出がいっぱいあるサスケのほうが、もっといっぱい辛くて苦しいに違いない。
それにだって、それにはイタチさんも絡んでる。
辛い時は。
悲しい時は。
幸せな気持ちになるのが一番ですよね?
それに、ミコトさんがどれだけサスケ達を大切に思ってたのか、こうしていると良く分かります。
約束は、果たしてくれなかったけど。
でも、私もそこに入れてくれようとミコトさんはしてくれました。
ぽつり、と涙が落ちる。
慌てて涙を拭って、作業を進める。
土鍋に氷砂糖と和三盆をザラメを入れて、煮小豆を入れて弱火にかける。
木べらで焦げないように底をかき混ぜる。
ゆっくりと、ゆっくりと。
こんなに手間のかかる物を、ミコトさんは何気ない顔で作っていた。
私が知る限り、いつも笑顔で。
だから、きっと、苦じゃなかった。
嬉しかったんだ、こうして、作ってあげる事が。
そうじゃなかったのかもしれないけど、私にはそう思えた。
それに、だんだん私も楽しくなって来た。
サスケは、怒るだろうか。
喜んでくれるだろうか。
でも、どっちでもいい。
だって、私が作りたかっただけですから!
仕上げに塩をひとつまみ。
そうして、ちゃんとミコトさんの味になっているか味見す
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ