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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜4
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に特徴的な生態があるらしい。
吸血鬼の生態に興味がないとは言わないが――だからといって、俺には兄と兄嫁のベッドシーンなんてややこしい物を覗く趣味などなかった。
(半ば職業病とはいえ……我ながら悪趣味だな)
 時折義姉が纏う妙な気配。あのテの気配は……まぁ、経験上そういう欲求が高まっている時だった。どうやら、彼女達の一族にはそういう時期が一定周期でやってくるらしいという予測を立てている訳だが……そんな予測は口が裂けても義姉や兄の前では言えたものではない。もちろん、姉や妹も同様だ。確かめるなど論外である。秘め事というのは秘密にしておくべきだから秘め事というのだ。と、それはともかく。
(だが、助かったのは事実だな。それに、どんな魔物だったかは分からないが、みんな無事で何よりだ)
 己が生み出した魔法生物との接続を断ちながら――代償として中空に生み出していた小さな血塊が蒸発するのを見ながら、呟く。
 どうやら、今日感じたジュエルシードは、恭也が見つけて対処してくれたらしい。完全に出遅れた自覚があったため、正直助かった。もっとも、封印できたと言う事は、ユーノはまだあの家に留まっているのだろう。何とかして引き離したいところだが。
(リブロムが上手い事やってくれればいいが……)
 それも正直不安だった。何せ、リブロムはなのはを苦手としている。ついでに言えば、何故だか――俺やら士郎やら恭也やらと同じで――桃子には頭が上がらない。下手をすると、なのはがこの一件に関わってくる事を止められない可能性がある。
「……いや、いくらあの二人が変わり者でも実の娘は可愛いだろうからな」
 自分に言い聞かせるように呟く。それで不安が消えた訳ではないが、現状では打つ手がない。あの家の事は、しばらく相棒に任せるしかない。
「そうだな。残り一七個、さっさと見つけてあのフェレットを追い払うか」
 結局のところ、それが一番手っ取り早く確実だった。それで、一連の厄介事にはケリがつく。この時はそう思っていた。




 ひと組の男女が愛を語らっている。男女と言っても、年端もいかぬ子どもだ。だが、子どもとはいえ――いや、子どもだからこそ、二人は純粋で真摯で真剣だった。その純粋なままの願いを、二人は一本の樹に誓う。この樹のように、この想いも大きく育ちますように。その願いに応じるように、樹は大きく育つ。大きく大きく。大きく大きく。やがれ世界を包み込むほど大きく育ったその大樹が見下ろす世界の片隅で、ひと組の若い夫婦はやがて子どもを――……
「……何だったんだ?」
 妙に甘ったるい夢を見たらしい。妹の蔵書にでも毒されたのだろうか。寂れた隠れ家の寝床の上で呟く。全くガラでもない夢を見た。
(本当に、一体何だったんだ?)
 安物の恋愛小説じみたその夢は、しかし妙に鮮明だった。
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