暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜4
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して、彼の言葉に応じる必要がある。
「ああ。厄介な問題だ。今まで以上にな」
 こう言う時、彼は一切言葉を飾らない。あくまで淡々と事実だけを告げてくる。彼がここまで言うなら、覚悟をしなければならない。
 そもそも、私には敵が多い。というより、当主として、目の敵にされている事や良からぬ企みの対象とされる事が多い。表向きも資産家であるため、なおさらだった。資産目当て。身体目当て。その両方。そんな輩は掃いて捨てるほどいる。変わってほしいなら変わってやる。普通の人間になれるなら。そう思った事がない訳でもなかった。
「……またウチの一族が何かやらかした?」
 それに、夜の一族と言うのは常人にはない力がある。それを鼻にかけて、色々と悪事を働く一族の者がいない訳ではない。それを抑え込むのも宗家である月村の役目であり――結果としてそういう血の気の多い連中に限って私達を目の敵にしてくる訳だ。とはいえ、そのどちらもここしばらくは大人しい。表向きは恭也のおかげ。裏向きは彼のおかげだ。この屋敷を包む不思議な力――私達に悪意を持ったものは近づくだけで動けなくなるという、異境も構築してくれた。それにまぁ――自作のセキュリティシステムも良好だった。
 この家にいれば、よほどの事がない限り、私達が脅威にさらされる事はないはずだが。
「いや、そちらは問題ない。確かに完全に大人しくなったとも言い難いが……まぁ、堅気の連中に手出しはしていないからな。それなら、多少のガス抜きくらいは大目に見た方がいいだろう。下手に締めあげてお前達を逆恨みされても困る」
 まるで猟犬だ。義弟の事を、そう言ったのは誰だったか。腹が立ったが――それでも、納得してしまった。確かに彼は猟犬だった。治安を乱すもの――彼が守ると決めたものに害を成すものを見つけ出し、狩りたてていく。ただし、手綱を握っているのは私ではない。もちろん恭也でも、彼らの両親でもない。もしも手綱が握る事ができるのなら、彼一人に押し付けずに済むのだから。
「それなら、一体何があったの?」
 ため息を飲み込み、問いかける。それから先の彼の説明は、なかなか受け入れづらいものがあった。とはいえ、吸血鬼と魔法使いの会話であれば、別に突飛な内容でもない。
「異世界の魔法使いが持ち込んだ、何でも願いを叶える宝石……ね」
光が差し出した、青紫に輝くひし形の宝石。それを受け取った途端に、血が騒いだ。確かに何やら妙な力を秘めているらしい。
「この宝石に願えば、私も人間になれるかしら?」
「可能性はある。だが、どんな代償を要求されるかは分からない」
 やめておけ。言外に、光は言った。私も本気で言った訳ではない。それは物騒ね、と気のない返事と共に、その宝石を彼に返す。
「ばら撒かれたのは全部で二一。うち三つは封印済みだ。残りを始末するまで、辺りが騒
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