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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜4
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と、士郎と恭也が首を傾げた。
 斬った者達の気と、斬られた者達の魂だ。彼らが動きを教えてくれる。
 そう告げると、恭也が驚愕の表情でこちらを見ている。言葉を失ったらしい。思わず苦笑がこぼれる。全く、今目の当たりにしたものを何だと思っていたのか。……もっとも、初めてこの供物を手にした時は、自分も驚いたものだが。だが、それも些細な事にすぎない。あの相棒の残して行った供物は、ただの武器魔法ではない。ただそれだけの事だ。そして、あの相棒が只者ではないことくらい、百も承知だった。
 驚くほどの事か? 俺は魔法使いだぞ――笑って見せると、恭也は憮然とした顔をした。だが、取りあえずの納得はしてくれたようだ。それがよかった事かどうかは知らないが。しかし――少なくともこの後、自分はすぐに後悔する事になる。
 何故なら、
「さぁ、修行の時間だ。道場へ行くぞ」
 迂闊にこんな魔法を使ったせいで、この家に住まうチャンバラ馬鹿ども――主に、恭也と美由紀に事ある事に絡まれる羽目になったからだ。
 もっとも、そんなやり取りの積み重ねが恭也や美由紀……特に御神美沙斗と血を分けた『実の娘』と、御神美沙斗に名を与えられた『義理の息子』の間にあったある種の確執を解かしていったのだろう。
「そうだよ、光。お昼の準備なら、私も手伝うから」
 頼むからそれはやめてくれ。仕事が余計に増えるだけだ――少なくとも、そんな軽口が叩けるようになる程度には。




 私が高町光――いや、御神光と出会ったのはほんの一年前の事だった。もっとも、そのさらに一年前は、私にとっては激動の一年だったと言える。その締めくくりが彼との……未来の義弟との出会いだったというのは、ある意味とても相応しいのではないか。そんな事を思う。
 私は……私達の一族は、実は普通の人間ではない。夜の一族という、いわゆる吸血鬼の一族だった。人の血を吸って生きる化物。人とは違うその身体を呪った事は一度や二度ではない。それでも。今から二年前、私はその全てを受け入れてくれる相手と出会うことになる。それが、彼の兄……高町恭也だった。彼との馴れ初めを話し始めれば限がない。だから、今は彼の弟との出会いについてに集中しよう。
 切っ掛けはごくありきたりなものだ。恭也の両親のもとへ挨拶に行く。それが切っ掛けだった。普通は逆だろうというのは、恭也の言葉だったが、残念ながら私は普通ではない。化物の義理の両親となるかもしれない相手に、挨拶の一つもしないなんて事は出来なかった。……それに、受け入れてもらえないなら、その時は。
 身を引くなら早い方がいい。そんな覚悟も決めていた。
 その覚悟が伝わったのかどうなのか。彼の家が近づくと、恭也が妙に周囲を気にし始めた。もちろん、心得のある彼の事だ。他の誰かが見ていたとしても気付かなかっただろ
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