魔石の時代
第一章
始まりの夜4
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響が出るかは知れたものではないが。
「さて、どうするか……」
気配の中心。そこには、薄い膜のようなものがあった。うっすらと、その奥に二人分の人影が見える。つまり、これが将来結ばれるであろう幼い恋人達だということか。その膜を破る事は難しくなさそうだったが……。
「どうする?」
繰り返し呟く。破っても大丈夫なのか。それだけが問題ではない。いつまでこのままにしておいていいのかも問題だ。万一消化吸収でもされれば厄介だ。消化されないとしても、例えばヴァルハラ寺院の繭のような事例もある。楽観は危険だろう。
「迷っている場合でもないか」
覚悟を決め、異形の双剣を生み出す。右手の小太刀を逆手に持ち替え、切っ先を突き立てる。その直前、思わず飛びのいていた。なりふり構わず、樹そのものから飛び降りる。
直後、桜色の閃光が視界を閉ざす。魔力によるものだ。分かったのはそれだけだった。
「隼の翼よ!」
速やかに近づく地面を感じながら、魔力を練り上げる。状況を確認したところで、生き残れなければ意味がない。もっとも、地面に叩きつけられたくらいでは死にはしないが。
ともあれ、翼が具現化すると同時、再び加速。おおよその勘で近くのビルの屋上に着地する。着地と言っても、ほとんど激突に近い有様ではあったが。
いくらか地面を転がってから、立ち上がる。
「何だと……?」
樹がなくなっていた。正確には、瞬く間に崩壊が進み、消えようとしていた。幸い、核となっていた幼い恋人達は無事らしい。魔力による保護膜に包まれ、ゆっくりと地面に降りていく。だが、肝心のジュエルシードは見当たらない。誰かが回収したらしい。
「あのフェレットの仕業、か?」
いや、あいつがこれほどの魔力を持っていたとは思えない。と、なると――
「あの野郎……。どうやら命がいらないらしいな」
撃たれたであろう方向を睨み、ありったけの呪詛を込めて毒づく。
おそらく撃ったのは、なのはだ。ユーノに唆されたのだろう。これほどの素質を秘めていたとは驚きだが、どうしても喜んでやるに気はなれそうになかった。それにしても、
「あのネズミ野郎、リブロムを出し抜いたか? それとも、まさかとは思うが相棒の野郎無視しやがったか?」
だとしたら燃やす。容赦なく燃やす。俺の血肉や魂のかけらを練り込んで作り出した以上、あいつもどうせ不死の怪物なのだ。少しばかり火にくべたくらいでどうにかなるものではない。
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